元動物園の飼育員(34歳)が異世界転生したら、動物に好かれるスキルにより、いつの間にか最強ハーレムな国を築いちゃってました

田中又雄

第1話 動物好きの異世界転生

「行ってくるね、太郎、猫又」と、我が家で飼っている愛犬と愛猫に挨拶をする。


「ワンワン!」「にゃーにゃー!」と、別れを惜しんでくれる。


 いつもありがとうよと、その日もいつも通り熱い抱擁の後に俺は家を出た。


 俺は昔から動物が大好きだった。


 実家では犬3匹、猫4匹を飼っていて、それ以外にもカラスが庭に来ると何故か俺に懐いてくれて、餌をあげると後日プレゼントを持ってきてくれたりなんてこともあった。


 昔から、どんな動物にも懐かれるのだが、どうやらそういう特殊な臭いでも発しているのではないかと家族にも言われていた。


 まぁ、理由はなんであれ大好きな動物に好かれるのだから悪い気はしなかった。


 そうして、大好きな動物ともっと関わりたいと思った俺は、大学卒業後は無事動物園に務めることとなり、今は大変ながらも色んな動物の世話を楽しみながらしていた。


 さてと、今日は虎のキョンちゃんの世話かー。


 うちの動物園は人手が足りないため、専門以外の動物も担当することはしばしば...。

特に危険な動物はやりたがる人が少なく、特にキョンちゃんは獰猛であったため、やりたがる人が少なかった。


 そこで白羽の矢が立ったのが俺だった。


 しかし、流石は獰猛なキョンちゃん。

割といろんな動物に好かれがちな俺でさえ懐くことはなく、微妙な距離感を保っていた。


 そんな何気ない日のことだった。


 いつも通り、キョンちゃんの檻の掃除をしていた時だった。

確かに鍵は閉まっていたはずだった。


「んーふふふ」と、鼻歌を歌いながら掃き掃除をしていると、子供が震えながら俺の後ろを指差す。


 檻の中の掃除のために、一回別の部屋に移したはずのキョンちゃんがそこにいた。


 俺が振り向いた瞬間、牙を剥き、思いっきり喉元に噛み付いた。


 その瞬間、死を悟った。


 もちろん、キョンちゃんを恨んだりはしなかった。

ただ、ごめんと心の中で謝った。


 俺の不注意のせいできっと、キョンちゃんは殺処分になってしまう。

それが悲しくて涙が溢れる。


 そうして、血混じりの声で俺はキョンちゃんを抱きしめて、「ごめんね」とつぶやいた。


 声になっていたかはわからない。

それでも、俺にはそうしかできなかった。


 そうして、薄れゆく意識の中、俺は太郎と猫又にもごめんねと告げた。


 さようなら、みんな。

大好きだったよ。


 目を閉じた。


 ◇


 目を開けるとそこは...どこかのジャングルだった。


「...ここは?」


 確か俺は死んだはず...と、喉元を触るとそれは傷ひとつない綺麗な喉仏があった。


「...俺は死んだはずじゃ...」


 その瞬間、森の草むらが激しく動く。


「誰じゃ!」


 弓を構え耳の尖った褐色の肌をした女の子が俺に問いかける。


 それは創作の中のダークエルフそのものであった。


「ダーク...エルフ?」


 どうやら、俺は異世界に転生したようだ。


 これが全ての始まりだった。

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