第21話 相生太陽斬

「どうしたの!?」


 ガシャドクロの腕ブン回し攻撃を飛行して巧みに回避しつつ。

 俺の傍まで来てくれる。


 空中で向かい合う俺たち。


 俺は


「ドラゴンソルジャー! 俺の手を握ってくれないか!?」


 俺は右手で剣を引っ提げ、空いた左手を差し出す。

 そしてこう続けた。


「そして、俺に力を貸す方法が無いか全力で考えてくれ」


 彼女は最初混乱していたけど。

 言葉が浸透すると


「ちょっと待って、それどういう意味……?」


 理由を訊ねて来たんだよ……




「なるほど……五行思想にそういうのがあるんだ」


 手早く理由を話すと。

 納得してくれた。


 五行相生。


 俺のパワーアップ。


 そのことを。


「……確かに私は木属性。だったらそういうのもありえるよね」


 そう言ってドラゴンソルジャーは


 俺の左手を握り。


 じっと、押し黙る。


 そして


 次の瞬間……俺に力が湧いてくる感覚が起こったんだ!


 おおおおおおおお!


「……これでどうかな……?」


 なんだか、ドラゴンソルジャーの声は弱々しい。

 やっぱりこんなこと、タダでは出来ないんだな。


 まぁ、大丈夫。


 絶対に結果は出すから!

 無駄にはしないから!


「ありがとうドラゴンソルジャー……! あとは任せてくれ」


 そう一言言い残し、俺は羽ばたき舞い上がる。


 俺の尻目に、ドラゴンソルジャーが弱々しく飛行しつつ、地面に降りていく姿が映る。

 もう彼女は、この変身では戦線離脱みたいだ。


 他の人間のパワーアップってそういうものなのか。

 ……失敗できないな。


 高く舞い上がり、ガシャドクロを見下ろす。


 ……いくぞ!


 俺は剣を大上段に構えた。

 そして、念じる……


 全力全開!


 最大級の……太陽斬!


 喰らえッッ!


 俺は急降下し、白く輝く剣を振り下ろす。


 俺の剣は刀身の長さがグングン伸び、そこに付随する形で、純白の高温の輝きが膨れ上がっていく。

 合わせて、10メートルを超える長さになっていた。


 ……名付けて


相生太陽斬そうしょうたいようざんッッ!」


 俺の叫びに応え、刃がさらに肥大化し。

 ガシャドクロを一刀両断、真っ二つにする。


 ヒアアアアアアアア!!


 ガシャドクロの最期の叫び。


 俺は着地し、斬り下ろした剣先をゆっくり持ち上げ。

 ひゅんと斜めに振るった。


 血振るいの動作だ。

 古流剣術でよくある動作。

 つい、流れでやってしまったけど。


 相生太陽斬で切り捨てられたガシャドクロは炎に包まれ、焼き尽くされ、消えていく。


 ……やったぜ。


 達成感を感じ、蹲っているドラゴンソルジャーに駆け寄り。


「ありがとう! キミのお陰だ! 本当に助かった!」


 礼儀だからという意識もなく、純粋にお礼を言いたくなったんでそう言ったんだ。

 だけど……


「良かったね……」


 顔を上げて来たドラゴンソルジャーが。


 青く輝いたんだ。


 それが何なのか、俺は知っている。

 タイムアップによる変身解除……


 制限時間が過ぎたので、起きた当然の結果なのか。

 それともさっきの五行相生で、制限時間がマイナスされたのか。

 ちょっと分からない。


 まあ、そんなことよりも


 そこにいた、ドラゴンソルジャーの正体が問題だったんだ。

 それは……


「笹谷……?」


 そこにいたのはクラスメイトの女の子。

 陸上部所属の、スクールカースト上位女子。


 ショートカットヘアのスポーツ系元気女子。


 笹谷ささたに理恵りえだったんだよ……。


 その正体が明らかになった彼女は。

 少しバツが悪そうに、俺から視線を逸らした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る