第20話 五行相生

 変身完了させた俺は、羽ばたき宙に舞い上がる。


 俺の隣にドラゴンソルジャーが並ぶ。

 彼女は槍を構えながら


「大きいね……どうするの先輩?」


 そんなドラゴンソルジャーの言葉に俺は


「まず手足を破壊しよう。巨漢は末端から破壊するのが基本だ」


 そう返す。

 すると彼女は


「……そうなの?」


 戸惑いを含んだ声で訊いて来たんだ。


 いやまあ、高瀬はそう言ってたぞ?

 そしてついでにいえば、俺は別に彼女がおかしなことを言ってるとも思わなかったし。


 デカいんだから、胴体部分は大きくて攻撃が通り辛くなるはず。

 だから先に手足を重点的に狙って、まず行動不能にすることを優先する。


 仕留めるのはその後だ。


 俺がそういうことを手早く説明すると


「ん、まぁ分かった!」


 ……なんとか納得してくれた。

 ドラゴンソルジャーは飛行し、四つん這いでこっちを目指して来るガシャドクロの右腕に斬りつけた。


 ……長槍を、薙刀のような形に変形させて。

 聞いたところによると、ドラゴンソルジャーは矛系の武器を扱うことができ、槍や薙刀、手槍など。

 矛から生まれた武器を全て扱えるんだそうだ。


 この辺は俺も同じで。

 俺が普段使ってる剣は刀身が打刀に近いものだけど。

 その気になれば野太刀にもできるし、投げナイフ、大剣もいけてしまうんだよな。


 俺は


「でやあああ!」


 気合を込めて、野太刀に変形させた剣で斬りつける。

 すれ違いざまの胴薙ぎイメージの斬撃だ。


 ゴオオオオオオ!


 ガシャドクロの悲鳴。

 完全切断は出来なかったけど、左腕の骨を半ばまで切断できた。




 そうして飛び回りながら何回か斬撃を2人掛かりで浴びせたんだ。

 だけど、さすがにデカ過ぎる。


 ガシャドクロの手足に深い斬撃を何回もつけることはできたけど、動きを停止させることはできなかった。

 一応、足止めはできているけど、足止めだ。


 行動不能じゃ無いんだよ。


 ……どうすりゃいいんだ?


 そうこうしているうちに


『変身後2分経過しました。残り1分です。決着をお急ぎください』


 ……マズイ!

 焦りで背筋が寒くなる。


 時間が無い。

 あと1分!


 俺はドラゴンソルジャーを見た。

 彼女は


「てやああああ!」


 ガシャドクロの後ろに回って、右足首に斬りつけている。

 結構深い感じだったけど、切断までには至らない。


 ガシャドクロが斬られたことに気づいて、振り返って左腕で虫を叩くようにドラゴンソルジャーを叩く。

 寸前で飛行して離脱し、それを回避するドラゴンソルジャー。


 ……向こうも難航しているな。

 これは……大技で一撃必殺を狙うしか。


 でも……


 このガシャドクロ、デカすぎる。

 俺が最初に倒した妖怪・牛鬼もデカかったけど。

 コイツはそれ以上に大きい。


 俺の必殺技の「太陽斬」でも、一撃で殺しきれる自信は正直無かった。

 何か、パワーアップするようなものがあれば良いんだけど……


 そのとき。


 五行相生ごぎょうそうしょう


 この言葉を思い出したんだ。


 木は燃料になることで火を燃やす。

 木属性は火属性を強化する関係にある……!


 そこに思い当たったとき。


「ドラゴンソルジャー! こっちに来てくれ!」


 俺は彼女に呼び掛けていたんだ。

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