ヒーローブレス!~謎の紳士に変身アイテムを貰った俺は、普通の人を守るための戦いに身を投じるが~
XX
第1章:赤い戦士
第1話 ヒーローの資格
「キミにはヒーローになる資格がある!」
ある初夏の日曜日。
俺が日課のロードワークに出ていたとき。
人気が無くなる河川敷で。
夕日の中、いきなりそんなことを言われた。
いつの間にか傍にいた、灰色の三つ揃いスーツを来た若い男に。
「……はぁ?」
俺の最初の返事はそれで。
この人、見た目は普通というか立派だけど。
春になると増えてくる、頭がアレな人間かと思い。
無視しようとした。
だけど
「
無視してロードワークを再開しようとした俺の背中に、俺の本名が投げつけられたんだ。
さすがに足が止まった。
……何で知ってんの?
怖。
そう思った。
どうしよう……?
そう、思ったんだけど。
数瞬迷って、俺は足を止めた。
そして振り向く。
「……何で俺の名前を知ってるんだ?」
そう、訊ねながら。
すると
「そりゃ、ボクはキミのファンだからね」
その若い男は、爽やかな、イケてる笑顔で俺のファンだと宣言して来た。
俺にファン……?
そんな風に首を傾げている俺に、何かあったのか。
「キミさ、学校で同じクラスのぼっち女子が不良男子に虐められているのを助けたでしょ?」
……そんな、俺にとっては苦い記憶を持ち出して来た。
あまり思い出したくない記憶。
「ああ」
……肯定する。
事実だから。
「なんで?」
「……絶対に反撃を受けない相手に、キモイとかウザイとか、一生結婚できないとか耳元で囁いて、頭を小突いているのが見苦しかったから」
正直に口にする。
俺のそんな言葉を若い男はニコニコしながら聞いていて
「そんなことでやっちゃうんだ? 相手の不良生徒、ここの名士の子供だったんだよね? 標的が自分に切り替わることは考えなかったの?」
そう、ツッコんできた。
俺は
「それは考えたけど、そのときの俺はどうでも良かったんだよ。自暴自棄だったんだ」
あのときの俺は、快不快で動いてて。
彼女を見捨てるのが不愉快だった。
だから
「絶対に勝てる相手にしかイキれないのか。みっともねぇな」
そう、大きな声で言ってやったんだよ。
あのときはスッとしたな。
まぁ、そのせいで。
そいつのイジメの標的が俺に切り替わった。
俺の言葉を受けたそのときは、そいつはそのまま引き下がったんだけど。
後日、仲間を連れて報復に来たそいつに「おいフェミ騎士。謝るなら今のうちだぞ」なんて言われて。
俺がそれを無視したら、モノを隠す、持ち物を破壊する等の各種嫌がらせを開始され。
まぁ、散々な目に遭ったんだわ。
俺がそんな感じで、あのときの苦い記憶を思い返していると。
俺の目の前の若い男は、ニヤニヤ笑いをしつつ
「自暴自棄なら、我が身を顧みずに助けちゃうんだ? ……それ、自暴自棄関係なくない?」
そう言った。クスクス笑いつつ。
「……何が言いたい?」
言わんとすることが分からなくて、そう訊くと
若い男は
「人助けか自己保身か、その選択の内容と、自暴自棄は関係無いんだよ。自暴自棄ならヒトは必ず人助けの選択肢を取るのかい……? 違うね」
そう言って俺に。
赤い色の、腕時計みたいなものを俺の手に押し付けて来た。
俺は思わず受け取ってしまう。
そして一方的にそんなことをして。
若い男は自己陶酔するみたいな調子でこう言ったんだ。
「キミは究極自分より他人を救う選択肢を取っちゃう人間なんだ。他人が不幸になってることを見るのが嫌な人間なんだ。……だからそれをあげるよ!」
あげるって……!
言われて見つめてしまった。
赤い色の腕時計みたいなもの。
良く見ると、文字盤の部分に数字が書いて無くて。
針は1本しかない仕様。
……これ、時計じゃないだろ。
腕時計なら時刻合わせに必要なはずのツマミも無いし。
何なんだ? コレ?
「なぁ」
これ、何なんだ?
そう問おうと思い。
そう言って、確認のために顔を上げたら。
若い男の姿は、消え去っていた……
えっと……?
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