act.3 ワールドトリップ篇③
牧場が広がるのどかなこの地域に、数年前、とある実業家が目を付けた。実業家はアメリカ各地で農園を経営し、少々後ろ暗い手を使ってでも自己実現に努める悪漢であり、いささか強引な
その実業家がこの街の周囲の土地の権利を一方的に主張し、多くの小作人とともに農地
牧場側の人間は
話し合いはたちまち口論となり、口論はやがて
こうして街は昔ながらの牧場側と、新興の農場側に分断され、かつての牧歌的なムードはどこへやら、街中いたるところで
最初に外部から用心棒を呼び込んだのは農場側だった。ナントカトン兄弟とその一味と言った感じの荒くれ者たちが
この街のシェリフは農場の実業家に買収されていたため治安組織は機能せず、町長の権力は銃火器の前では
死者が
二人の命が惜しければホニャラット一派はこの街の争いから手を引けとの通達を受けた牧場側は、
膠着状態第二弾となったあたりで、ようやく町長が行政手腕を発揮した。
「このまま睨み合っていても何ともならん。次の銃撃戦はどちらか一方が
町長の提案に、二つのグループはしぶしぶながら同意した。さすがにこれ以上の人的
「農場側が勝てば大規模農園の建設を認める。牧場側が勝てば農園のこれ以上の拡大は禁止、また同意なく耕作した土地は元の牧草地へ原状回復するように。またどちらが勝っても人質は
ただし、人質を持つ農場側は相手側に条件を付けてきた。牧場側が雇ったホニャラット一党からは代表者を出すなというものだ。さもなくば牧場主の息子夫婦の命はなく、そしてこの
「それで選ばれたのが」とハルヒはフォークを置いて言った。「あたしたちってことね」
実に満足げな表情で、
「任せておきなさい。勝負事は得意なの。っていうか負けた覚えないわ。だからそのホニャララ兄弟? じゃなくてあたしを選んだってこと、相手に絶対
さらっと自分がすることにしていやがる。まあいいか。長門にやらせたほうが確実だが、こういう場面でハルヒが先頭に立たないなんて、授業中の
ハルヒは余裕の
「で、決闘はいつ?
「明日の正午じゃ。場所はこの街のメインストリート、
町長の答えにハルヒは
「ところでこの街、宿屋ある? お
「おそらく湯船はなかろうな。シャワーのあるところを手配しよう。もっともこの街には宿も一軒しかないが」
「それ、ちゃんとお湯が出るやつ?」
「うーむ、出るのではないかな?」
町長の顔からは、そんな細かいこと覚えとらん、みたいなニュアンスが感じ取れたが、
「いや、出そう。うむ、出る。たった今そうなった。なんなら湯船もつける」
どこかからの電波を受信したように、きっぱりと言ってのけた。
俺の隣の席にいた古泉が、笑いを
「ずいぶんと便利な世界なんだな、ここは」
町長は突然ゲホゲホとわざとらしい
「以上で説明は終わりじゃ!
そう
「あれっ? えっ?」
俺たちはクロークで
そのバスルームは湯船に洗い場シャワー付きのシステムバスだった。まったく、どこまでもサービスのいいことで
こうして一晩をゆったり過ごした後、翌朝再び集合し、町長の引き立てで牧場側の人間たちと一通り顔合わせと型どおりの
と、まあ、これが今までのあらすじだ。では、
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