act.1 ファンタジー篇⑤
いくら
「これでいいんでしょ? それで、世界を支配したがっているなんていう考えなしの魔王はどこ? 教えなさい」
「あー」
賢者は
「実はその
「鍵はどこよ?」と訊くハルヒに、賢者はますます言いづらそうに、
「ここより北の位置に
「ふうん」とハルヒは
「……『聖別の玉』はわしが持っておるわけじゃが、いや……何というか、年のせいかのう、最近目がかすむようになっておってじゃな、この病には西の果ての地に生えておるという……」
老人は寒々しい
「……『
またもや
「あんたさ、本当に正義側の人間なの?」
じろりと老人の顔を
「怪しいわね。今時『~じゃ』なんて言うお爺さんがいるのもおかしいけど、なーんか、
「な、何を言うか」
「本物の賢者はとっくに殺されてたりしてさ、親切めかして鍵やら玉やらの情報を教えてくれてるけど、本当はこれこそ魔王の、さらにバックにいるラスボスを解放する手段なんだったりして。魔王を倒してやれやれ帰ろうかと思った
森の賢者は救いを求めるような表情で俺を見た。
「それはない……」
老人の反論の弁舌は弱々しい。
「うむ、ないはずじゃ。そうだったかもしれぬが、いやいや……ないことになった。間違いない。魔王がラストで、その後はない。わしはただの親切な森の賢者じゃ」
その言葉を証明するように、老人は懐から水晶玉を取り出した。
「眼精疲労は
と、また別の玉を出してきた。
「これが『
「ありがと」
ハルヒは何度もうなずきながら、しかし手を
「でもいらないわ、そんな玉。ややこしそうな鍵も必要ない。教えて欲しいのは一個だけよ」
「魔王の城はどこ? 場所だけ教えてくれたら後はなんとかするわ。うん、もう
「じゃが」と老人は
「いいの」
ハルヒは
「あたしにはこんなにスゴい仲間たちがいるんだもんね。こざかしいアイテムなんていらないわ。世界なんかいくらでも救ってあげるわよ。きっと、あたしたちには出来るもん」
そしてハルヒは
「なぜなら、あたしがそう信じてるから」
というわけで――。
俺たちはやって来た。たぶん、色んな行くべき場所をすっ飛ばし、必要なアイテムも手に入れず、スタート地点からまるっきりレベルアップすることもなく、いきなりの最終地点に。
そびえ立つ魔王の城が
「どうすんだよ、ハルヒ」
俺は
「ろくすっぽ戦いもせずに来ちまったが、
「僕もそう思いますね」
「正面からの
「でしょうね」とハルヒ。まったく動じていない
「…………」
長門は何も言わない。ぽつねんと立っている
「平気よ」
ハルヒは自信あり気に力強く答えて、さっきからぶるぶる
「ここはみくるちゃんに何とかしてもらうから」
「ええっ?」
のけぞって驚く朝比奈さんの肩に手を回して、ハルヒはセキセイインコに言葉を教えるような口調で、
「いい? あなたは魔法使いなのよね。それも勇者グループに加えられるくらいだから、きっと世界の
「で、でも……」
朝比奈さんはおろおろと両手でマントを握り、ハルヒと魔城を代わる代わる見つめる。
「あたし、あんまり魔法知らなくて……。せいぜい耳を大きくするくらいしか……」
「自分を信じなさい」
時と場所を選びさえすれば非常にタメになるフレーズだが、時や場所なんかに
「みくるちゃんはやれる。あたしが選んだんだから絶対よ。あなたはスゴい
ピンと伸ばした指が魔城に向けられた。
「究極のみくるマジック、今こそ発揮の時が来たわ。
「は、はいっ……!」
朝比奈さんは目を閉じてうつむき、なにやらモゴモゴと
どうした? と
朝比奈さんによる超
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