第24話「2人の師匠 2」

第3演習場




「ここ……が、第3演習場だよな。」




食堂で、偶然居合わせた天弥と一緒に朝食をとった後、別れて、未良に指定された第3演習場にやって来た勇輝が、未良の姿を探していると…




「まだ、来てないの…」



「わっ!」



「っ!!!!」




後ろから、肩を掴まれると共に、大声を出され、勇輝はものすごく驚きながら後ろを振り返る。




「へへ笑、びっくりした?」



「ちょっ、未良さん………」




そこにいたのは、いたずらっぽい笑顔を浮かべる未良であった。




「しっかりと、驚いてくれてありがと笑」



「もう……早く、訓練しましょう。」



「お、随分とやる気じゃん。」



「早く魔力を扱えるようになりたいので。」



「OK〜〜じゃ、始めよう。」




勇輝のやる気を受けて、気合いを入れ直した未良は、大演習場のおよそ4分の1の広さの、地下にある第3演習場のど真ん中に勇輝を連れて行き、向かい合う。




「さて。もう一度、魔力についての基礎を復習しつつ、実践で感覚を掴んでいこうか。」



「はい。」



「まず、この世界には魔素と呼ばれる粒子が存在し、それは基本属性の火、水、風、土。派生属性の光、氷、雷、闇。あと無属性で分けられる。そして、魔素には、生物の体内にのみ存在し、基本的にはその量と属性は生涯不変である内魔素と、体外にいくらでも存在する外魔素の2つの種類がある。ということは、勇輝の体内にあるのは?」



「無属性の内魔素。」



「正解。で、魔素からは魔力というエネルギーが得られ、そのエネルギーを消費することで、様々な現象を起こすことができる。」



「内魔素から得られる内魔力により発現できるものは、身体能力強化と思考速度上昇と、あともう1つの3つだけで、外魔素から得られる外魔力により発現できるものは、持っている天能と本人のイメージで決まる…ですよね?」



「笑、うん。じゃあ、これは覚えてる?私達は外魔素から直接、外魔力を得ることはできないってこと。」



「あ、あぁ〜〜最初に言ってましたね。内魔素は、自分が持つ内魔素の量が決まっているから、一定時間に生成できる内魔力の量に制限があるけど、自由に干渉できるのに対して、外魔素は、体外にいくらでもあるから、生成できる外魔力の量に制限はないけど、自由に干渉できない…………あれ?なら、僕はどうやって『解錠』の天能を…」



「笑、そこで必要になってくるのが、内魔力の消費によって起こせる現象の最後の1つと、連鎖と呼ばれる技?…うん、技。」



「連鎖………あ、昨日、千躰さんが白雲さんに言ってましたよね?連鎖が上手だって。」



「そうそう、あの子は連鎖が上手だったから……って、よく覚えてるね。勇輝って、もしかしてめちゃくちゃ賢いんじゃない?笑」



「絶対にそんなことないですって。たまたま覚えてただけで……まぁそれは置いておいて、その最後の1つと連鎖について教えてください!」



「はいはい笑。まず連鎖っていうのは、魔力を消費して近くの魔素から魔力を生成すること。そして、内魔力によって起こせる現象の最後の1つは、体表面の同属性外魔素との連鎖。意味分かる?」



「えーっと……」



「まずは、私が実践するね。」




そう言って、未良は壁に向かって、手を伸ばす。




「体内にある闇属性の内魔素から少しだけ闇属性の内魔力を生成して、それを手の平の方に移動させるように操作。そして、手の平まで来たら、その闇属性の内魔力を消費して、手の平の表面の闇属性の外魔素と連鎖させて、闇属性の外魔力を生成。さらに、その闇属性の外魔力を消費し、近くの闇属性の外魔素から闇属性の外魔力を生成……というのを、前の壁まで繰り返して行き……直前で、闇属性の外魔力を消費して、私の天能『調停者』と私のピージョを呼び出したいというイメージに沿って、現象が引き起こり…」




と、未良が言うと、壁の近くに黒い煙が発生し、そこから綺麗な空色の羽を持つ黄金の瞳の鳩…ピージョが姿を現す。




「クルッポ〜!」



「って感じ。」



「なるほど……普段、無意識に行っていることを、ちゃんと説明すると、こんな風に……」



「難しいでしょ笑。でも、これをしっかりと理解して、できるようになることで、今、勇輝の中にある増えた内魔素もちゃんと制御できるようになるから。」



「頑張ります!」



「じゃ、勇輝もさっきの工程を意識しながら、この南京錠…」




元気に勇輝と未良の周りを飛び回っていたピージョを肩に乗せつつ、ポケットから南京錠を取り出し、それを壁際に立てる。




「これを、その位置から『解錠』の天能を使って、開けて。」



「分かりました。ふぅ……僕の無属性の内魔素から内魔力を生成して……」



「もし、魔力暴走を起こしても、この第3演習場には使用者の制御外の魔力を検知して、魔力暴走を抑えるような魔道具が設置してあるから。安心してね。」



「そんな魔道具が………っ!!!ぐっ!!」




ピピーッピピーッ




自分の魔力から魔道具の方に意識が逸れたせいで、魔力生成を誤り、大量の内魔力を生成してしまった勇輝が、魔力暴走を引き起こした瞬間に、演習場内の警報機が鳴ると共に、すぐに魔道具が動き、天井から黒い箱が落ちてきて、勇輝を包む。




「うわぁぁああ………あ?あれ……」




数秒のうちに、勇輝が生成していた内魔力が霧散し、魔力暴走が治まった。




「笑、ちゃんと発動したみたいだね。前まではよく使われてたんだけど、最近は中々使われる機会がないみたいだから、動くか心配だったけど……よいしょ。」




未良は、黒い箱を上に持ち上げ、中から勇輝を出す。




「こ、これが、魔力暴走を止めるんですか?」



「そうだよ。さ、もう1回チャレンジ。」



「クルッポ〜〜」




箱を畳み、入口付近にある縦穴の中に入れつつ、ピージョを外に遊びに行かせた未良は、再挑戦を勇輝に促す。




「はい………すぅ……はぁ……」




今度は、魔力暴走を引き起こさないようにと、少なく内魔力を生成することを意識して、無事、手の平の外魔素への連鎖までを終える。




「ここから、向こうに連鎖………」




口に出しながら、生成した無属性の外魔力を消費し、再び無属性の外魔力を生成し、また消費して、というのを繰り返す……



その途中で…




「あれ?魔力が……」



「無くなったか笑」



「はい………う〜ん……なんでですか?」




自分で考えようとしたが、結論に行き着かなかった勇輝は、未良に答えを求める。




「それを説明するためには、魔力を扱う上で大切な3つの要素を紹介しないといけない。」



「教えてください!」



「分かったって。簡潔に言うよ。その3つの要素とは、魔素から魔力を生成する速度の"魔力生成速度"。生成した魔力を操作する速度や正確性をまとめた"魔力操作精度"。消費した魔力量のうちの発現に使われた魔力量の比率である"魔力消費効率"。この3つのこと。」



「魔力生成速度と魔力操作精度と魔力消費効率…」



「うん。ま、詳しいことは後から説明するから、どんどん挑戦だよ。次は、さっきよりも多めに内魔力を生成して、やってみて。」



「はい!」





◇◇◇◇



昼時




「よし、一旦止めようか。内魔力もそろそろ限界……だよね?」



「限界……いや、もう少し大丈夫そうですけど、結構疲れちゃって……すみません。」



「だよね笑……って、やっぱ勇輝の内魔力量は凄い多いね。あの麗生ちゃんとほぼ同等じゃない?」



「そうなんですか……僕自身はよく分からないんですけど……ふぅ……」




未良の止めの言葉を聞き、勇輝は肩の力を抜き、一息をつきつつ、昨日の3期生の評価の時に気になったことを未良に聞く。




「そういえば、氷室さんが属性天能持ちで森人族…って言われてたんですけど、どういう意味なんですか?」



「あぁ。なら、天能の種類について話そうか。」



「天能の種類?」



「そう。天能にもいくつかの種類があって、まず神の名を冠する"神天能しんてんのう"。神へ抗う強き者を現す"者業天能しゃごうてんのう"。体の形質を変化させる"化身天能けしんてんのう"。属性そのものの力を持つ"属性天能ぞくせいてんのう"。あと、これ以外っていう風に分けられるの。」



「う〜ん……僕の『解錠』はそれ以外で、未良さんの『調停者』は者業天能。刀花さんと…あ、茅野さんも神天能だ。そして、氷室さんが属性天能って言う、属性そのものの力を持つ天能ってことですね?」



「うん。でね、その属性天能っていうのは、麗生ちゃんも言ってたように、その属性の全ての現象を引き起こせるの。氷室ちゃんだったら氷属性の…例えば、氷柱を飛ばしたり、地面を凍らせたり、氷の剣を作ったりとか、氷関係の発現なら何でもできるんだ。」



「え、それって…」



「まだ驚くのは早いよ笑。しかも、属性天能を持っている人は掌握領域って言う、その領域内であれば連鎖を瞬時に終わらせられ、魔力消費効率も98%まで上げられるようなチート級の領域を、自分を中心とした一定範囲内に作ることができる。」



「は?……連鎖を瞬時に?……魔力消費効率が98%……一般的な魔現師が70%から80%なのに?」



「ズルいよね笑。あと、森人族や小人族は外魔素との親和性が高いから、より連鎖も上手くて、さらに、麗生ちゃんは内魔素量もかなり多いから、ほんと良いとこ取りって感じ。」



「すご……」



「でも、掌握領域を使うためには相当な修練が必要らしいし、内魔素量が多いほど、魔力制御は難しくなるから、別に麗生ちゃんは恵まれたから強いんじゃなくて、厳しい修練を重ねたから、強いんだよ。」



「……僕も頑張らなきゃですね。」



「そういうこと。でも、続きの訓練は、お昼ご飯を食べた後にしよう。」



「分かりました!」



「お腹空いてるでしょ笑」



「正直、めちゃくちゃ空いてます笑」



「だよね〜」




楽しく会話を交わしながら、勇輝と未良は演習場の入口の方に向かい…




「あ、もう1つ聞きたいことがあって…」



「なに?」



「魔人族って、どんな種族なんですか?」



「おぉ…魔人族っていうのは、森人族や小人族と同じく長命種で、外見的特徴としては、目の結膜が黒で、虹彩と瞳孔が赤い……私達の白目の部分が黒色で、黒目の部分が赤色の種族。」



「白目が黒で黒目が赤?」




今朝会った、亜麗の外見を思い出して、未良の説明に首を傾げる。




「でも、この大陸では、ほとんどの魔人族が魔道具で、その特徴を隠してるから、その人が魔人族かどうかの判断は、結構難しいかな。」



「なるほど……亜麗さんは、魔道具を使ってたのか…」



「ん、亜麗?会ったの?」



「あ、はい。未良さんとの訓練の前に、亜麗さんの訓練を受けました。」



「へぇ………笑、そっか。」




既に勇輝が、亜麗のお眼鏡に適ったということを聞き、未良は笑みを浮かべ…




「よしっ!勇輝!これから頑張るよ!」



「はい!」




こうして、勇輝は、立派な魔現師になるために、亜麗と未良からの訓練を受け、自分の体と魔力の扱いを鍛え上げていくのだった。





to be continued

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