異世界に呼び出された俺は救世主として魔王を討伐することになってしまった件

シャチマくん

第一巻

序章「異世界生活に慣れろ」

第1話「呼び出された救世主」

 俺の名前は黒神深夜。どこにでもいそうな普通の高校生だ。高校生活を始めて二年目を迎えることになる。俺はクラスの中でも上々に位置する成績を誇り、五教科のなかで一番得意なのは英語だ。それも英語で書かれた本も多少なら読めるぐらいで、それに関してはクラス内でトップだった。


 俺には仲の良い女子はいるが、恋人はいない現状を過ごしている。特に仲良しなのが、春瀬桜花と言う中学一年生の時に出会った女子である。彼女とは初めての席替えで隣になったことがきっかけで良くお喋りをする仲に発展した。それも俺が読んでいたオタク向けでもある【ライトノベル】の話題で盛り上がることが多くて、最初の段階では彼女もそれを知らなかったぐらいだ。さらにクラスメイトの殆どが【ライトノベル】を知らないほど、人気は低かったが、俺から内容を教えられた人たちの四割に興味を持たせるだけの影響はあった。それに好まない人たちでも【ライトノベル】を馬鹿にする奴らはいないほど、その存在は拒否されることが少なかった。桜花も一緒になって読み始めるぐらいの人気を誇ったののである。


 そして俺がお昼休みの時間に図書室をと訪れていた。そこで本を借りるため、いつもの棚を探していると、そこで英文で執筆された本があり、勉強するのに丁度良いと判断した上で受付に通す。それを教室に持って帰って読もうとした時に突如異変が起きた。


「うわぁ! それって英語じゃん! さすが深夜だよね? 英語が得意なだけあるわ」


「まぁな。勉強に使えると思って借りたんだよ。タイトルは日本語で訳すと【エルシオン王国の救世主】だ。物語になっているみたいだし、勉強には最適だと思う」


「後でどんなお話だったか聞かせてよ? 私じゃあ読めないから、内容だけ教えてくれると嬉しいな?」


「分かったよ」


 そうやって俺は早速本を開くと、そこで突然ページが光り出し、俺の視界を遮った。










そして気が付いた時には知らない場所に来ていたのである。


「ここは……?」


 すると、そこで俺が周りを見ると、そこには桜花や他のクラスメイトまで来ていた。さらに俺らを囲うようにして鎧を纏った兵士だと思わせる人たちがいる。


 そして、目の前に現れた女性によって、俺らの現状が明かされた。


「ようこそ。エルシオン王国へ! 貴方たちは今日からこの国の救世主になります!」


「はぁ? 何を言ってるんだ?」


「理解が遅れるのも無理はなりません。元々魔法もスキルも存在することがない世界から連れて来た人材です。しかし、召喚対象は適性のある人材に絞っています。それとは関係のない人たちやもいますが、適性者の影響で同等の力を得ていると書物には書かれているのです。きっとそれに間違いはありませんわ」


「お前は誰だ!」


 俺は咄嗟に独り言を吐いた女性にそんな問いを投げ掛けると、



彼女は冷静にその答えを出した。


「私はエリスティア・ディオローズです。この【エルシオン王国】を治める王者に地位に立っています。どうかよろしく」


 エリスティアが言うには、この場所は【エルシオン王国】と呼称されているらしい。しかも俺らはその国を救うための救世主として召喚された人材で、それも適性を受けてここにいるそうだ。そんな彼女が何で俺らをこの場所に連れて来たのか、そこに疑問を持った桜花がその質問を問い掛ける。


「貴方の目的は何よ! 私たちが何で救世主なのか教えなさい!」


「良いでしょう。貴方たちは私の手で召喚された異世界人です。それも魔王の討伐に相応しい人材の前にしか現れない本を手に取った人物がそれに至ります。しかし、それは周囲にいる人間も高い確率で同等の力を持っていると本が示したのです。そこで貴方たちには私からこれを受け取ってもらいます」


 すると、エリスティアがそれだけ口にすると、俺らの目の前に一枚のカードが落ちて来た。それを拾い上げると、いきなりそれが光って文字が羅列される。それを読んでみると分かる通り、それは俺らの身体情報が数値で表されていた。項目の欄に記されたているのは【腕力】【腹筋】【知力】【脚力】【持久力】【MP】【レベル】の七つだ。それ以外にも【固有スキル】と【魔法】と書かれている。俺が持つ【固有スキル】は【ナイトエフェクト】と【捕食】の二つで、さらには【魔法】は展開魔法の【ナイトワールド】と錬成魔法の【魔剣生成】になっていた。


「そこに記された【固有スキル】と【魔法】は貴方たちの初期になりますので、その項目に触れると説明が提示されます。それを確認の上でこれからレベルを上げていってもらうことになるでしょう」


 俺は試しに【ナイトエフェクト】に触れてみると、それの解説が表示される。その【固有スキル】の効果は【夜の間は身体機能が活性化される】のと【五感が通常よりも五倍になる】の二つを得られると言う。さらに【捕食】は【あらゆる生物を食べることが可能になる】の他にも【食べた生物によってステータスが上昇する】と言った効果があるみたいだ。どうやら【固有スキル】は大体そんな感じで、残る【魔法】の解説も確かめると、かなり凄いことが判明する。


 まず【ナイトワールド】は【一定時間中は半径千キロメートル先までを夜に変える】と言った魔法で、最後に【魔剣生成】は【揃えた素材を使って魔剣を生成する】ようだ。


(俺の場合だと、まずは【ナイトワールド】で夜に変えてから身体強化した上で、【魔剣生成】によって生成した魔剣で攻撃を仕掛けるのに特化しているみたいだな? けど、それを扱うには【MP】を消費してしまうから、そこは注意しないと無くなった時に困る。それ以前に攻撃手段は魔剣があれば大抵は切り抜けられるから、魔法は手強い相手と交戦する時が望ましい。それまでは魔剣で応戦するか?)


 そんな風にこれらの扱いにはゲームで得た知識が役に立つみたいで、その手のジャンルはプレイして来た通りだ。それにエリスティアが言うには、俺が教室に持って帰った本は適性者を直接選ぶ性質があると思われる。つまり俺は適性者の中でも特に強いと判断できるのであった。後はステータスを見れば、どれだけ個人差があるのかが一目瞭然なので、それを今から確かめることにしようと思う。


「桜花はどうだった? エリスティアの言っていた本はきっと俺が借りて来た奴だ。巻き込んでしまって悪いな?」


「ううん。深夜は悪くないよ。だってその本は適性者の前に現れるのなら、それを手にするのも分かっていたってことでしょ? つまり、それは仕組まれていたことなんだよ」


「そうか? それなら俺も仕方がないと思えるよ」


「それよりも私のカードも見てよ? 私たちのプレイしていたゲームでも良くあるパターンなら、使い方は大体一緒でしょ? そこで【MP】は魔法を扱う上で必要になる数値ってことだよね?」


「そうだろう。俺もそう思った」


 そんな風に桜花も俺と同じことに気付いていたようで、それが確かなのであれば、この世界を攻略するのも容易いと思われる。


 そして俺は桜花が見せてくれたカードを確認すると、そこでは彼女が持つステータスが異様にバランスが悪いことに気付いた。それも桜花のステータスの中でも一番優れている能力値は【脚力】と【知力】と【持久力】の三つである。


「桜花に見られるステータスによると、能力値の高低がはっきりしているな? それも特に【持久力】が俺よりも高い上に【固有スキル】が【サーチ】と【耐性強化】か? それに加えて空間魔法の【領域改変】と強化魔法の【アクアフォース】が扱えるようだな」


 そこで桜花の【固有スキル】でもある【サーチ】は【半径三十キロメートル先にいちすあらゆる生物を特定できる】と言った効果になる。これは生物が接近して来た時に即行で分かるため、かなり便利なスキルだ。それに【領域改変】は【半径五キロメートル先に存在する物質を他のものに変換する】ことが可能な魔法らしい。さらに諸注意を見て分かる通り、変換させられた物質は消えてしまうようで、土も対象に出来るみたいだ。それなら土から武器を作り出せば、いつでも攻撃態勢が取れる。さらに【アクアフォース】で水属性の武器を強化することが出来てしまうようなので、そこを【領域改変】使って水属性の魔剣を作れば、効果が発揮される対象にもなるのだった。


 それをすべて桜花に話すと、そのアイディアはかなり名案であると驚く。それほど俺の提案は上等なもので、彼女には適していた。


 そして他のクラスメイトたちともカードを見せ合っているうちにエリスティアから話がされる。それはこの先で俺らが過ごすことになる部屋の案内だった。案内先で俺らは過ごして行かなければならないそうだが、そこはかなり広い一室となっており、自分たちがこれまで使っていた部屋よりも良質と言える。どうせ魔王を討伐して欲しいと頼まれている身としては上等だと思われた。


 そうやって俺らは一人ずつ部屋を授かったところで、まずは一夜が明けた頃を見計らって戦闘技能を上げるための修行を施す予定を伝えられる。そこで俺らを指導する人物はシリウス・ロックバスターと名乗り、普段はエリスティアの護衛を務めているようだった。彼は魔法の扱いに長けており、その指導力には期待できると言っていたので、俺も一夜が明ける頃が楽しみである。

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