仕組まれた罠
私、
敷地内には梅や桜、紫陽花、カキツバタ、ツバキなど色とりどりの花が咲き四季の移ろいを感じられる庭園がある。そんな我が家の自慢の中庭では、縁側から眺める優美な景色を肴に、お父様がよく花見酒をしていたっけ。
毎年、この帝都を守る四神の神々へ捧げる「四神祭」が開催される日には、なぜだか分からないけれど、特に屋敷中の花が異常ともいえるくらい華やかに庭を彩るのは近所でも有名な話。ご利益にあやかりたいだなんて、お参りしにくる人もいるくらいだ。
とはいえ、そんな広いお屋敷に今住んでいるのは私と仙の二人だけ。
かつては使用人を多く雇っていたけれど、お母様も私が幼い頃に病気で亡くなり、1年前にお父様も亡くしてしまった今の私には、大きな後ろ盾もない。今後のことを考えて雇っていた使用人たちに多めの給金を渡して暇を出したのは、つい半年前のことである。
そんな私に転機が訪れたのは、九条
遊学されていたとかなんとかで、長く帝都を離れていらっしゃったそうだけれど、噂話に疎い私の元にも蒼志様の噂はすぐに耳に入ってきた。
甘やかな瞳に、すっと鼻筋が通った中性的な容貌。柔らかな眼差しで、いつもにこやかな笑みを携えた蒼志様は、すぐに街でも人気の御仁として名を馳せた。
そんな方から、まさか私に声がかかるとは思っていなかったから驚いたけれど、蒼志様は我が家のことも気にかけてくださる優しいお方だった。嫁入りの際には水無月家への支援と、仙を一緒に連れて行っていくことも許可してくださるというから、私もこの話を前向きに検討することにしたのだ。
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