第12話

 重なり合った手にビックリして、思わずはね除けてしまった。感触がまだ残り何だか落ち着かない。


「あっ!ごめん、痛くなかった?」


 慌てて声をかけると、梨緒ちゃんは小さく首を振った。


「大丈夫……わたしがいけないですから」


「どうして、急にこんなことしたの?」


「可愛かったから、ついからかいたくなって」


 彼女は、悪びれる様子もなくさらりと言い放つ。


 もしかして、わたし舐められてる?一応、年上なんだけどなあ。よし、一発ガツっとかましてやるか!!


「コ、コラ!……お姉さんをバカにしない!」


 声を張り上げてみたが、梨緒ちゃんは「可愛いね」と小さな声で返すだけ。その言葉のに何とも言えない恥ずかしさが込み上げてくる。


 なんでそうなるの……そんなにわたしって、子どもっぽく見えるのかな?


「年上をあまり舐めないほうがいいですよ!!」


 「ふーん」


 梨緒ちゃんの手が肩に触れる。次の瞬間、力強く押されたわたしは押し倒されてしまう。


「本当に怒りますよ!!」


 必死に抵抗しようとするものの、梨緒ちゃんは余裕の表情を見せる。


「だったら押し退ければ?お姉さんならできますよね」


 挑発するように言いながら、彼女は初めて楽しそうな笑みを浮かべた。その余裕な表情を崩したくて、全身に力を込めて押し返そうとするが――


「重くて、動かない」


 必死のあまり心の声が漏れ出る。その言葉に梨緒ちゃんはムッとした表情を浮かべた。


「女の子に重いって失礼ですよ」


「それを言うなら、押し倒すのも失礼じゃない?もう充分からかって、楽しめたでしょ?」


「えー、全然満足できませんよ。実際こういうシチュエーション、ドキドキするでしょ」


「そんなことないです!」


 わたしは顔を赤らめて反論する。梨緒ちゃんは満足げな笑みを浮かべたかと思った次の瞬間、彼女はわたしの胸に頭を埋めた。


 「ちょ、ちょっと何してるの!?」


「うーん、いまいち心音が聞こえづらい」


「は、恥ずかしいよ」


「たしかに恥ずかしいよね。中学生にここまでやられて抵抗できなくて」


 彼女は直に心音を聞くために、わたしのシャツのボタンを外し胸に耳を当てる。


「わー、本当にすごいドキドキしてる。爆発寸前じゃん」


 こんなことされて、実際ドキドキしてるのが悔しい。だって、生意気なくせに顔がカッコよすぎるんだもん……


 終始、彼女に主導権を握られたまま振り回される。打開策がないかと考えていると、廊下から慌ただしく走る音が聞こえてきた。

 

「ヤバいよ!南さんが帰ってきてる!!」


「ヤバいね。お姉ちゃんに怒られちゃうかも」


 そう言いながらも焦るそぶりを見せない。


 困惑したわたしは、なんとか説得しようとした。しかし、梨緒ちゃんはニヤニヤと笑みを浮かべるばかりで動かない。

 

「いやだなぁ、唯さん。そんな顔しないでよ。もっと楽しもうよ」


「楽しむって、どういうつもり……?」


 挑発的な態度に、心臓がさらにバクバクと鳴る。年下だと油断していたのが間違いだった。危険な予感がする。


「バレるかバレないか、ギリギリのスリルを味わうの」


 彼女はさらに体を密着させてきた。キラキラと輝く目には、無邪気さと少しの危険な香りが混ざっている。


「唯さんのこともっと知りたいな。いろんな意味で」


 梨緒ちゃんは子どものような笑顔を見せる。だけど、その行動は全然子どもっぽくない。


 抵抗しようとするわたしに、彼女は笑いながら現実を突きつける。


「無駄だよ?」

 

 そう言うと、彼女はわたしに自分の体をぐいっと押しつけた。身長差のせいで、わたしの顔は彼女の胸に埋まる形になる。


 いい匂いが鼻をくすぐり、窒息するような圧迫感で頭がくらくらする。も、もう限界…!


 わたしは梨緒ちゃんの二の腕を掴んで、力を込めた。必死の力で彼女を押し退けると、そのまま起き上がることに成功する。


「ど、どうだ! わたしを舐めるなよ!」


 得意げにドヤ顔を決める。わたしだって、やればできる!

 

 ところが、梨緒ちゃんは倒れそうになり、とっさにわたしの服を掴んだ。その拍子にバランスを崩したわたしは、勢い余って梨緒ちゃんに覆い被さる形で倒れ込んでしまう。


 次の瞬間、部屋の扉が開いた。最悪なタイミングで南さんが帰ってきた。


「ものすごい音が聞こえたけど……2人とも何しているの!?!?」


 状況は最悪だ。お互いの服が乱れ、梨緒ちゃんを押し倒しているわたしの姿は、誰がどう見ても「襲っている」ようにしか見えない。よりによって、友達の妹に……。


 さらに、追い打ちをかけるように、梨緒ちゃんにボタンを外されていたせいで、わたしの服は引っ張られた拍子に肩が露わになり、ブラまで覗かせている。


「い、いや、これは誤解です、南さん!」

 

 慌てて弁解しようとするわたしの声が上ずる。


 しかし、梨緒ちゃんはさらに事態を悪化させるように、弱々しい声でとんでもない一言を吐き出した。


「唯さん、えっち……」


 瞳には涙を浮かべ、頬を真っ赤に染めたその顔。絶対にわざとだ。完全にこの状況を楽しんでいる……!


 わたしは対照的に顔を青くする。もはや言葉が出てこない。脳内では未成年に手を出したことで、刑務所に連行される自分の姿が浮かぶ。



『面白いかも!』


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モテ体質の女の子だけど女子高なら問題ないよね? 百合の人 @yuzusio299

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