#16 【凸待ち】本邦初公開のsperママとイチャつきながらコスプレ爆弾を投げまくる月雪フロル【電ファン切り抜き】
『けっこう知名度あるんだな、私……』
「ここが私のチャンネルなのもあるとは思うけどねー。……ほんと、来てくれてよかった」
『切実だね』
普通の凸待ちの準備をしてきたのに、開始五分で想定外のオンパレード。早くも心が折れかけていた矢先のことだったから、こんなに心強いこともない。
実のところフロルとしてママと接するのは初めてに近かったから少し不安でもあったけど、なんか自然と娘らしい甘えの混ざった態度になった気がする。これが吊り橋効果?
『まずは10万人おめでとう、フロル。私としても誇らしいよ』
「ありがと。ママのおかげもあるよ」
『お礼を言わなきゃいけないのは私の方だよ。こんなに早くいくつもお仕事が来るとは思ってなかった。もしフロルが頼みに来てくれなかったら』
「んーん。私はsperママ以外考えられなかったから。もしなんてないよ?」
『……民草のみんな、フロルはこういう子なんです。たぶんいつか修羅場になると思います』
「ちょっと!?」
〈てぇてぇ〉
〈デレデレじゃん〉
〈かわいい〉
〈親娘てぇてぇ助かる;2000〉
〈sper先生お仕事来てるんだ〉
〈伝説の初配信も含めて存在がバレたしな;500〉
〈めちゃくちゃ仲いいな〉
〈ここまで距離感近いのは何かあったのでは?〉
〈修羅場w〉
〈お母さんみたいなこと言ってる〉
〈まあ百合ハー逆ハーは作るよね〉
〈フロルは総愛され〉
〈さっきので答え出てるでしょ〉
……修羅場もなぜ今そんなことを言われるのかもよくわからないけど、これは本音だ。イタズラがバレる前からもしデビューするならママはsperしか考えられなかったし、それはハルカ姉さんにも見抜かれていた。
ただのデビュー準備からの関係にしては距離感が近いのはバレているし、無理に隠す気もない。どうせいつかは節々の発言からバレるし。
「ママとは都会で擬態を始めてすぐの頃からの付き合いですからね。バレて弱みを握られてモデルをさせられて、いろいろありましたけど」
『ここ二年くらいの気合い入れた絵はだいたいフロルがデッサン人形の代わりをやってくれたよね。しかも参考のコスプレ付きで』
「また恥ずかしいファンアートが増えるようなことを……」
『ちなみに対象の絵は全部まだレイヤー分けしたまま残してあるよ。ひと手間加えればフロルにできる』
「料理みたいなノリで娘の恥を大量に増やさないで?」
〈擬態〉
〈そういやこの子人間に擬態してたんだった〉
〈弱みを!?〉
〈デッサンモデル!?〉
〈コスプレ!?!?〉
〈フロルが裏でメイド服とかチーパオとかもこもことかバニーとか着てたんですか!?〉
〈しかもママの家で!〉
〈当たり前のように配信外で面白いことしてやがる;500〉
〈えっ〉
〈マジ!?〉
〈(ガタッ)〉
〈需要はあります;20000〉
〈何卒……何卒……;8000〉
うん、やったんだ。実際はバレたのはママのほうで、私はそのまま距離を詰めたほうだけど。もっといえば二人構図の絵は二人でポージングしたりもした。メイド服もバニーも浴衣も、なんなら水着もアニメキャラコスも着たよ。さすがに恥ずかしかったけど。
それを何回かやったところでハルカ姉さんにいろいろバレて、私の素性やら雪の話をライバーより先に明かされた。ママを担当することはあの時点で内々に決まっていたとすらいえる。
恥とは言ったけど、実は私もちょっと見たい。大好きなイラストレーターが描いた自分なんて、ご褒美以外の何物でもないし。サムネがそればかりにならないように気をつけないといけないくらい。
……今の20000円、さっきの入間さんだ。ありがたいけど、無理しないでね。あとさっきからひたすら500円を連投し続けているゲンゴロウさんも。
と、準備ができた。実は話しながらママとテキストでもやり取りして、Tsuittaアイコンのサイズが大きいものを受け取っていたのだ。事前に配信画面に用意してあった「来てくれた人一覧」の一番左上に表示……現在ここを争って白熱のレースが行われているけど、誰にも与えられることはなかった。哀れ。
『このまま話すことはできるけど、それだとフロルの記念枠なのに私の話になっちゃいそうだし……せっかくだから会話デッキを使う?』
「相手側から会話デッキに触れることなかなかないよ? ……まあそれなら練習も兼ねて使うけど」
凸待ちや逆凸のように多数の準備ができていない相手と話す場合、配信主側が会話デッキといって話題を用意しておくことも多い。当然使うのは初めてだから、付き合ってもくれるみたいだしやってみよう。
といっても、凸待ちとしては珍しいことに今回は来てくれる人の大半がまだ絡みのない人たちだ。会話デッキはそちらに合わせたものになっているけど……。
「じゃあ、今の話にもちょっと関係するんだけど、私の第一印象はどんなだった?」
『第一印象か……一目で可愛くはあったけど』
「き、急に刺してこないでっ」
『それ以外だと、猫を被るのが上手い子だなって思ったよ。ライバーの人たちと私以外には今でも“真面目ないい子”で通ってるでしょ?』
「うーん、否定はしないけど……第一印象それってことはママは最初から何かしら気付いてたってこと?」
〈はいてぇてぇ〉
〈さすがママ、わかってるー!〉
〈フロル相手に素で押せるの貴重では〉
〈確かに雪ちゃんはずっと可愛いいい子って話だった〉
〈夢エティアの時普通に信じられなかったしな〉
〈ママは初対面で分かってた……ってコト!?〉
〈このママ強いぞ……!?〉
上手いといいながら即座に見抜いていたとばかりの発言。そろそろわかってきた、この人たぶん配信もトークも上手い。実はこの通話が始まった時点から声もナチュラルに変えているし。学校での声より大人っぽい、安心感のある低音だ。家で二人きりのときもこっちだったから、むしろ素なのかも。
そして私はイタズラっ子キャラに少し不安が出てきた。エティア先輩といい、たまに勝てる気がしない相手がいるんだよね。このままだとただのクソガキになってしまいそうだ。
「人間のフリ始めて三年になるけど、それがバレたの自体ママだけだよ」
『観察には自信あるからね。……でも、たぶんもう一人薄々気付いてるよ』
「え、嘘」
『
「自信なくすなぁ……人喰いアルラウネだってバレたらそこにいられなくなるし、気をつけないと」
『むしろ人を食べないアルラウネを知らないけど、そうだね。とはいえ、あの子がおかしいだけだとは思うよ』
「ママはもっとおかしいんだけどね」
〈こわ〉
〈そういやこの子人をぱくぱくとか言ってたな;500〉
〈でも人間の食事が美味しすぎてもう人は食べられないとか〉
〈フロルの擬態がいまいちなのか、鋭すぎるのが二人いたのか……〉
うーん、そうだとしたら橙乃は要警戒かもしれない。かなり鋭そうな朱音にはずっと気をつけていたんだけど、そっちか。
本来なら私の方からの第一印象も繋げるところだけど、ママの場合はどのくらい表で活動するのかまだわからないからスキップ。
「じゃあ次……これもライバー向けの質問なんだけど、私と一緒にやりたいことってある?」
私は電ファンの中ではコラボを多めにやりたい方のつもりだから、その布石や下調べを兼ねた話題だ。ママには答えづらいかもしれないけど……。
『けっこういろいろやってみたいかな。親子コラボは歓迎だし、誘ってくれたら暇を見つけて来るよ。何かのゲームでも、作業雑談でも』
「ほんと? 忙しくなってきたところだと思ってたんだけど……」
『フロルは知ってると思うけど、私は筆が速い方だし……年の瀬あたりからはスケジュールにもちょっと余裕出てくるから』
「まあ速い方どころか爆速だけど」
〈お?〉
〈ママ今後も出てくれるの?〉
〈これは嬉しい〉
〈娘想いや……〉
〈ママ優しすぎる〉
なんだか思っていた以上に好感触が返ってきた。確かに最近は親子コラボと題して配信に現れるどころか、自分のチャンネルを持ったり受肉して個人勢を兼ねたりする人も多い。数ある創作者や表現者の中でイラストレーターが特に配信をやりがちなのは、Vtuberとの関連性や親和性がやはり大きいのだろう。
私としては担当したお仕事の成果が出てくるだけでも縁や取っ掛かりにできて嬉しいのに、配信にまで出てきてくれるならこんなにありがたいことはない。一度話してはいたけど、本当に乗り気になってくれるとは。
『あとは……電ファンハウスって3Dモデルが使える広い空間があるよね』
「? うん。よく動画になる共用リビングとか、併設スタジオとか」
『大丈夫な絵のときは、今後はそこでスケッチするのもいいかもね。配信でも動画でもいいけど』
「うわ、すごいこと考えるねママ? もう遠慮なくなってきてるじゃない」
『電ファンはそういうのを許してくれる事務所だって、ハルカさん本人がわざわざ口止めに来た時からわかってるよ』
「まあね。たぶんその様子を動画にされるし、限界オタクモデラー班の手で私の3D衣装が増え続けるよ」
〈!?〉
〈マジで言ってる?〉
〈それ見れるの!?〉
〈もはや公式番組のムーブだが;500〉
〈確かに電ファンならやらせてくれそう〉
〈見たい;300〉
〈公式さん、何卒……!;1000〉
確かに、絵面的には面白いと思う。最近の技術革新で3Dモデルの衣装チェンジも昔より簡単になっているし、ライバーにあれこれ着せたり持たせたりしたすぎて入社した精鋭モデラー部隊がその気になったらコスプレの部分すらもしかするかも。というかほぼ確実にそうなる。
私もママと同意見、やらせてくれると思う。ただ、
「それやるなら、ママも何かモデルがあったほうがいいかもね。汎用のやつでもいいけど、たぶんお願いしたら電ファンは作ってくれそう」
『セルフ受肉か……配信には出るし、考えてみても』
「そこまでやったらもうVtuberだけどねー。チャンネルも作るところまでいきそう」
『作っても個人配信はあんまりやらないと思うけど』
「それで本格的にやり出したらPROGRESS入りになりかねないから気をつけてね。前例あるから」
『
「いずれはアリになるかもしれないみたいな言い方……」
さっきからずっとそうだけど、コメント欄が荒ぶっている。いよいよ読めない速度になってきた。みんなママのことを認知してくれて私は嬉しいよ。あの初配信をした甲斐があった。
電ファンは面白くて人格のしっかりした個人勢は人気どころからネクストブレイク枠まで運営の裁量でPROGRESSとしてスカウトするのだけど、その中にはなんといるのだ、sperと同じ電ファンライバーのママが。PROGRESS三期生、不如帰もず……エティア先輩のママである。かなり最近のスカウトだったから四期生には間に合わなかったけど、五期生は一人担当したいと自ら公言済。
それも実例のひとつとして、電ファンは後腐れなく面白くなるなら突拍子もないこともやる。ママも気をつけてね。
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