闇中夢
ウヅキサク
取材テープ
夢の中で、心霊写真を撮るんです。
嘘なんかじゃないですよ、本当の話です。
いつも、同じ建物の写真なんです。いえ、この説明だと分かりにくいですね。ちゃんと説明します。
夢の中で私は同じ旅館に居るんです。泊まってる……んだと思います。でも外にいたり玄関にいたり客室にいたり廊下にいたり、場所はバラバラです。
そこでね、私は携帯を片手に持っています。少し明かりが暗いけど、雰囲気があって良い旅館だなと思っています。
それで私は写真を撮ろうと思うんです。だって昔ながらの古めかしい雰囲気ある旅館ですよ。今時の人は誰だって写真を撮りたくなるでしょう。
携帯電話のカメラを旅館の中に向けて、シャッターボタンを押します。写真を撮ってその写真を確認すると、居るんです。何かが。
黒い影なんです。
人のような形をしていたり、塊みたいだったり、歪んでたり、紐のようだったり、色々です。一度なんか写真全体にぼんやり靄がかかったようになっていた時もありました。
写真を撮って、それを見て初めてハッとするんです。
これは、いつもの夢だって。
そこで目を覚まします。いつも慌てて携帯を確認するんですが、そんな写真は勿論写真フォルダにありません。
でも、こんなことがずっとずっと続いていたんです。
毎日ではないですけれど、不定期に、忘れることが出来ないくらいの頻度でここ何年か、ずっと。
だから私は怖くて怖くてしょうがなくて。
そんなある日、私はテレビでこの旅館を見つけたんです。ええ、いつも夢に出る旅館を。本当に凄い偶然でした。
私は休みを取ってこの旅館を訪れ、一泊することにしたんです。
やっぱり夢の中で、この旅館の写真を撮りました。
ええ、心霊写真です。
でもね、いつもと違ったのは、写真がね。
ほら、これ。見てください。
ここ、隅っこのここの所。黒い靄が凝っているでしょう。
これ、心霊写真なんです。夢の中で撮った。私が撮ったわけじゃありません。何か夢の謎が解けるかもと思ってこの旅館に来たは良いものの、怖すぎて写真なんか一枚も撮れてないんですから。それにほら、この写真の撮影時間。……丑三つ時ですよ。深夜に、こんな昼間のような写真が撮れるわけないじゃないですか。
夢から覚めて、写真を確認したら、写真フォルダの中にこれが入ってたんです。
私はもう怖くて怖くて……。
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