執行対象a〜僕は史上最悪の犯罪者〜

@hinata081231

第一章 無知蒙昧編

プロローグ 開演

 あなたは、人の肉が焼ける匂いを嗅いだことはありますか?


 それはもう想像を絶する不快感のある匂いでしょう。吐き気を催し、頭がくらくらするかも。



 まあ、もしもの話はよして置きましょう。


 実際、私もそんな人の肉が焼ける匂いなど嗅ぎたくないですし、何より考えたくないですから。


 嗅いだことのある、という人はごくごく…僅かでしょう。普通は嗅がない。嗅ぎたくない。そういうものです。


 戦争、紛争に巻き込まれ嗅ぐなんてことはあるでしょう、今の世界ではそれが身近に潜んでいるかもしれない。




───え、結局何が言いたいかって?



 んー、そうだなぁ…。



 じゃあ、あなたに質問です。

 


 あなた、人を殺せます?



 おっと、驚かせました?それは申し訳ないです。


 もっと細かく言うなれば、そういう状況に追い込まれたときですね。


 正当防衛だの、なんだのある中でです。




 あ、僕はやりますよ。やらざるを得なかったし。


 でも…やっぱり、恋で悩んでた頃に戻りたいですね。あの頃の悩みが馬鹿みたいだ。


 何年前だろうか…懐かしいな。


 え、あぁ、!ごめんなさい。少し思い出に耽っていました。


 あっ、ほら、これ。ついに僕も新聞の一面ですよ〜


 そこには大きく、写真とともに大々的に取り上げられていた。



 「執行対象aまたも犯罪者を殺害」



 その写真には、おそらく、犯行現場と思われるであろう、河川敷?のような場所が警察の手により規制されている現場であった。




 私は思わず、声も出なかった。




 ──あはは、参っちゃうよね!僕もさぁ、こんな大事にする気はなかったんだよ?




 こんな…こんな奴が存在してていいのか?



 僕は、思い切りそいつの顔面を殴ろうとする。



 だが、止められた。寸前で、しっかりと。



 そして、奴は耳元でこの世の悪を練り合わせたような声で囁く。




 「まだ話してんだろ、動くなよ。」


 息を思わず飲む。自分の行動全てにこいつの許可がいるのではないか、そう思わせる。


 なぜ、私はこんなことになったのだろうか。


 執行対象aの捜査などに志願しなければ…こんなことにはならなかったろう…










 時は三年前に遡る。






 反射する街の光。その光を背に、一人の男が電話をしていた。


 「次の継承者はまだ決めてねぇ、だが、てめぇらが用意したっていう、候補者って奴らは継承者にしねぇよ。」


「なんでって、そりゃあ、」


「つまんねぇ、だろ?」


「御生憎様、俺はアウトローな男なもんでね。決まった道には進まねえ主義だ。」




 そう言うとすぐに、男は電話を切った。


「ちっ、きっしょい犯罪者共め………ま、俺もか…」

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