お昼寝の後の銃撃戦

いぎたないみらい

キャッキャウフフヾ(*´∀`*)ノ

 ライオンの迫力に泣き出す子。


 パンダの可愛さに騒ぐ女子たち。


 小動物やアルパカと触れ合い、子供たちよりもはしゃぐ先生。


 本日、遠足で動物園に来ています。庄司雪です。小4です。


「庄司さん、楽しんでる?ずっと無表情だけど……」


 虚無な私の様子に異変を感じたのか、担任の先生がこちらにやって来ました。


「楽しいですよ。大丈夫です」

「そう…?ならよかった」


 動物は好きですよ?ただ、今はお腹が空いてそれどころじゃないんです。今日は朝ごはんが食べられなかったので。




 ああ……!やっとお弁当の時間です……!


「わーー。雪ちゃんのお弁当、美味しそ~」

「えへへ、ありがと。咲絢ちゃんのはキャラ弁?いいなぁ…!」

「でしょぉ~!」


 友達の咲絢ちゃんと一緒に、お弁当を食べることにしました。

 咲絢ちゃんのお弁当は本当にすごいです。デイニー・プリンスのキャラ弁です。凝ってる……。

 うちの人にも見習ってほしいです………。

………いや、無理ですね、あの人には。



 お弁当を食べてすぐ、咲絢ちゃんがあくびをしました。なんだか眠そうです。


「雪ちゃぁん…。お昼寝しない?」

「あはっ。いいね~。そうしよっかぁ」


 木の下に、2人で並んで横になります。


 お日様ぽかぽか。風がそよそよ。

 ……気持ちいい~…………。





―――――



―――――――――


――――――


 ……どれほどの時間が経ったのでしょうか。いつの間にか寝ていたようです。

 目を覚ますとそこは、私の知らない無機質な部屋でした。


「あ~…。起きちゃったか~」


 知らない男性の声がしました。


「………飼育員さんですか?」

「うん、そうだよ。ここ結構暗いと思うんだけど……、…見えるの?」


 確かに、右目だけだと暗くてあまり見えませんね。

 さて…。ここからどう逃げましょうか。


「言っとくけど。僕、銃持ってるからね?」

「え」

「暴れたり叫んだりしたら、お友達撃つけど……、いい?」


 そう言いながら、彼は咲絢ちゃんの頭に銃口を向けます。


「っ………!」

「おっと。下手に動かれるとおにいさん、びっくりしてうっかり、撃っちゃうかもな~」

「…っ……………」

「ふふふっ。い~こい~こ。おにいさんの知り合いが来るまで、じっとしててね…?」


 なるほど…、お仲間がいるんですね。

 彼がいつ連絡したのかはわかりませんから、やるなら早くした方がいいですかね。


 左手の人差し指を誘拐犯に向け、撃ちます。


「っ……ぐぁ!?」


 あ、外してしまいましたね。彼の右足が血で滲んでいます。サポート無しだとやっぱりまだまだですね。

 まあ、手足が縛られていないので、訓練時よりはまだ楽ですけど。


「静かにしてください……。咲絢ちゃんが起きちゃいますし、人が集まってしまいますよ?」

「っあ゛……!………くっ…!」


 誘拐犯が銃口をこちらに向けます。撃つつもりでしょうか。

 ドン…ッ!!と、発砲した音が響きます。


「あがっ………!?」


 彼の右腕から血が飛び散ります。

 ぅきゃぁーーー!!咲絢ちゃんに血が!あなたの血が付いちゃったじゃないですかぁー!!どーしてくれるんですか!!

 あと彼に撃たれた左肩がちょっと痛いです!今故障されると面倒なんですよ!?


 ―――全くもう……!怒りましたからね!


 勢いのままに誘拐犯を押し倒し、その上に乗ってやります。


「っ………!……!?なっ…!?」


 彼が持っていた銃がどこかへ落ちました。

 彼は私の左肩を見て驚いた声を出します。


「なんで……っ!なんで血が出てねぇんだよっ!!」


「しぃ~………。静かに。撃ちますよ?」

「っ!……」


 わぁ。すぐに静かになりましたね。脅すってすごい。


「あなた、一般人ですか?」

「え、ゆ、誘拐犯……」

「…お仕事は飼育員さんだけですか?」

「ん、う、うん…」


 今の今まで、自分が脅していた小娘に馬乗りにされ、尋問を受けるなんて。同業者さんではなさそうですが………。


「お仲間さんはどういう人ですか?」

「に…日本語がカタコトだったから、外国人だと思うけど…。それ以外は知らない。ほっ、ホントだよっ……!?」

「闇バイト的なものですか」


 誘拐犯は首がもげそうなほどの速さで、首を縦にふります。

 しかし、そうなると厄介ですね…。後でこの人のスマホから逆探知でもかけますか。


「あ、あの………」


 誘拐犯がオドオドと声をかけてきます。


「あの……。そろそろ…、その。降りてもらえる、かな……、なんて……」

「――――――。……………ふっ。あははっ。そーですねぇ…」



「―――残念でしたね。サヨナラ」







「―――………ん」

「咲絢ちゃん、起きた?」

「ん……。…あれ。雪ちゃん…。上着脱いだの?」

「うん。ちょっと暑くなっちゃって…」


 ……まさか、血で汚れてしまったなんて言えません。咲絢ちゃんに付いた血も、上着で拭き取りましたからね。汚れが酷いことに…。

 今さっきの出来事は、墓場までもっていきましょう。


 というか、咲絢ちゃん。すぐ横で発砲されてたのになんで起きなかったの?寝てるふりしてたの?それとも爆音でも動じない人?


 そんなことを考えていると、遠くから担任の先生に声をかけられました。


「庄司さーん、小町さーん。そろそろバスに乗るよー」

「「はーーい」」


 ああ。

 遠足、楽しかった!

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お昼寝の後の銃撃戦 いぎたないみらい @praraika

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