星の使者

にゃんポコ

第1話異世界への扉

第1話: **「異世界への扉」**


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僕の名前はアオリ。普通の高校生だ。特別な才能もないし、別に目立ちたがり屋じゃない。ただ、心の奥深くにはいつも冒険を求める気持ちがあった。退屈な授業の合間には、ファンタジー小説を読み耽り、異世界の英雄たちに憧れていた。それなのに、現実の僕は、何の変わり映えのない日々を送っていた。


ある日の帰り道、いつも通りの道を歩いていると、ふと目を引かれる光が神社の奥から漏れているのに気づいた。好奇心が湧き上がり、自然と足がそちらへ向かっていた。周りには誰もいない。静寂が広がる中、僕は神社の扉を開けた。古い木の扉は思ったより重く、抵抗を感じたが、心を奮い立たせて引くと、パタリと開いた。


その瞬間、目の前がまばゆい光に包まれた。眩しさに瞳を閉じる。強い風が頬を撫でる感覚がした。でも、次の瞬間、地面が消えたように感じて、僕は何もない空間に落ちていく。まるで、現実の世界から引き離されてしまったかのように……。


気がつくと、僕は草原の広がる美しい景色の中に立っていた。空は青く、二つの月が静かに浮かんでいる。どうして僕がここにいるのか、さっぱり分からない。視界の隅に、色とりどりの草花が揺れ、遠くの山々が幻想的に輝いている。


「あなたが『星の使者』ですね?」


不意に背後から聞こえた声に驚いて振り返ると、そこには不思議な少女が立っていた。白い髪が重力に逆らうように風に靡いている。彼女の目は明るい青で、どこか神秘的な輝きを放っていた。


「星の使者……?」僕の口からその言葉が漏れる。何を言っているのか理解できない。


少女は頷き、笑顔で言った。「そう、あなたが選ばれたのです。この世界、ルーメナを救うために。」


「僕が……選ばれた?」疑念が心の中で渦巻く。僕はただの高校生だ。特別な力なんて何も持っていない。


「私の名前はリリィ。風の星の使者です。」彼女は名乗り、しっかりとした口調で続けた。「私たちが危機に瀕しているのです。闇の使者たちが現れて、世界に混乱をもたらそうとしています。あなたは、今こそ力を借りて戦ってくれるべき存在です。」


僕の心臓は激しく鼓動する。まるで小説の中の冒険の一場面のようだ。しかし、現実として受け入れるにはあまりに突飛すぎる。言葉を探し、何とか返答を試みる。


「どうして僕なんですか? 僕には何も…」


「選ばれた理由は、今は分からないかもしれない。でも、あなたの中に秘められた力があるのです。それを見つけ出し、解き放つことが求められています。」リリィの言葉には迷いがなかった。


その時、僕の胸に何かが揺さぶられる感覚を覚えた。内心の恐怖や戸惑いを押し殺し、冒険の香りが漂うこの瞬間を逃したくないという気持ちが頭をもたげてきた。アオリは、運命の扉が一度開かれたことを感じ取った。彼の新しい物語が今、始まるのだ。


「分かった、やってみるよ。」その言葉が口をついて出た瞬間、心の奥からどこか熱いものがこみ上げてきた。


リリィの笑顔が輝いた。「さあ、共に行きましょう。これから私たちの旅が始まります。」


空を飛ぶような高揚感を感じながら、僕は彼女の後を追った。この異世界で何が待ち受けているのか、まだ僕には分からなかったけれど、新たな冒険の始まりを感じていた。


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こうして、アオリの運命は大きく動き出したのだった。



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