天使は眼鏡をかける

室西アプリ

プロローグ

清白

 俺はきっとあの夜の事を死ぬまで、いや、死んだ後でも忘れる事は無いだろう。

 美しいものを識った。

 醜いものを識った。

 どうしようも無い虚しいものを識った。 

 善いものを知った。 

 悪いものを識った。

 傲慢を識った。  

 決意を識った。

 

 あの夜の事が無ければあんなに悩むことは無かった、あんなに苦しむことは無かった。

 嫌だ嫌だと口では言いながら学校に行って数少ない友達とだべって意味もなく夜更かしして次の日居眠りして怒られて、そんな変わり映えしない毎日を過ごせていただろう。

 退屈だけどきっと、平和だ。何度も命の灯火が消えかけるような事も無い。

 それでも、それでも、それでも、俺はあの選択を後悔しない。あれがあったから今の俺がある。同じ人生を何回繰り返しても俺はあの選択をするだろう。君に逢えた、あの選択を。

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