第44巻 我が道は死の道である。

長編小説

我が道は死の道である。

第44巻

わたしは全ての感情を受け入れた、そして全ての理不尽を受け入れた、そして全ての希望を受け入れた、全ての絶望を受け入れた、この世のありとあらゆるものを受け入れた。そんなわたしはおかしくなってしまった。わたしは全てを受け入れそして生きているからわたしは常に渦の中で生きている。わたしは色々な感情に常に襲われた。わたしはこの世の真理に耐えられなかった、わたしは人間の成す、全てを許さなかった。理解しようとしたが理解できなかった。わたしはこの世に怒りを覚え、悲しみを覚え、全ての感情を表現した、わたしは全ての感情をコントロールをすることができなかった。わたしは人間、いやわたしを一番理解できなかった、なぜわたしはこんな腐った世界にまだ慈悲をなし、弱き者に慈悲を与え、強気者を助けるのか、傲慢な人間を助けるのか、怠惰に生きる人間を助けるのか、自分で自分が理解できなかった。わたしは何故生まれたのだろうか、何故こんな腐った世界に何故こんな純白な魂が生まれたのだろうか、一切の穢れがない魂が誕生したのだろうか、わたしは世界によって少しずつ穢されていっている。わたしは嫌だこんな人生は、何故生きれば生きるほど魂が磨かれるのではなく、腐っていくのだろうか、穢れていくのだろうか、わたしにはこの世の作りが理解できなかった。しかしわたしもこの世界に染まることができなかった。わたしは純粋と穢れの間を行き来していた。わたしは誰も見たことがないような景色を何度も見た、それは絶望でもなく悲しみでもなく喜びでもなく、それは感情を超越していた、わたしは感情という言葉では言い表せない何かを感じた。わたしはいつも死を望むのはそのせいなのかもしれない、わたしはそれと名付けた。それはわたしにも理解できず、しかし親近感があり、わたしであってわたしではないような何かを感じる。わたしは何故かまだ生きている。いやそれに生かされているわたしはそれが何かを知りたい、いや知っている人生を捧げても知ることができないのは直感でわかっている、しかしどうせ死ぬならそれを理解してから死にたいじゃないか、わたしの人生の生きる意味はただそれだけだった。わたしがこの世でどんなに穢れてもわたしは純白を守り、それを追い求める、わたしの行く道は死の道である。言葉が不足だな、死ぬよりも死を感じる道だ、それはまさしくそのままの意味の、死が作った道。死道とでも名付けようか、わたしは決してどんな人間も通ったことのない道を行く、それは常に感情に襲われ、しかし平常心を保ち、現実から決して目を背けることはせず、全ての感情を受け入れる、人を捨てた道である。これは一つの世界線の物語、死ぬよりも辛い人生を生きる者の物語、だが、その人間の記憶は常に保存され、魂保存の法則とでも名付けようか、誰も証明することはできない物語、この先永遠に理解されることのない物語、そしてそれは生まれる。始まりはなく終わりはない。いつ生まれていつ消えたのかはわからない。だがしかしそれは生まれた。誰にもそれを証明することはできない。どんな天才だろうと、どんな生物だろうと、それは宇宙の真理なのだから。それは宇宙そのものなのだから、それは誰にも語れない存在なのだから。

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