短編小説

幸せの向こう側

第14巻

女は幸せを追い求めていた、不幸が嫌いだった、常に向上心を持ち、堕落を嫌った、そして自分の意見を押し殺すことを嫌った、人間関係で妥協を許さなかった、女は今日も夢を見る。女は少女であった、高校生であった、いつも勉強をしていた少女は外の世界を知りたかった、こんな檻の中の人生は嫌だった、少女が勉強をしていると外で壁当ての音が聞こえる、少女は何故かその音が懐かしかった、何故か自然と涙が出てきた、少女は不思議でならなかった、こんな気持ちになるのは初めてだった、外に出てみるとそこには1人の少年がいた、少女は泣きながら声をかけた、何故壁当てをしているの？少年は答えた、何故壁当てをするのかって？それは君みたいな人が見てくれてこうやって声をかけてくるのを待っていたからだよと、女は笑ってしまった、そうだね確かにそれで声をかけられたわね君は、まんまと君の作戦に嵌められたわと、お互いに笑った。そして目が覚めた、女は夢の内容が思い出せない、最後の夢だけは思い出せない、だが何故か涙を流していた。