#陽射しが眩しい筈、だったけれど

STORY TELLER 月巳(〜202

#陽射しが眩しい筈、だったけれど

#陽射しが眩しい筈、だったけれど


【storyteller  by  Tukimi©︎】

20230128

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久しぶり、と言った彼女が、誰か。

一瞬。

名前が出なくて困った。


覚えてもらえなかったかあと残念そうに眉を下げたその人、が。

思い出のままだったから。



八年ぶりの父の故郷。


急に亡くなった、顔も知らない祖父の、実家に、両親と呼ばれてから。

祖母の訃報が届いた。

誰も行かないわけにはと言う父が、言うままに、スーツを着て。


五歳年上の、いとこ、麻子さんが。

駅に迎えに来てくれたらしく。広い駅前の真ん中で、白いバンをバックに立って。

久しぶり幸晴くん、と。



言われたのが。

陽射しのせいか眩しくて。


その割には、この人、髪綺麗だとか、白ワンピースにサンダル姿か、とか。

よくよく見えている。

そう記憶も、あり。


あれ、これ、俺どうしたんだろと、何故か最初の名を呼ぶ、麻子さんの一声以外。

済ます耳に入らないそれに、戸惑う中で。


ブラックアウト。

視界が消えた。





目が覚めて見たのは、猫。

起きた?と言う麻子さんが、熱中症よ、と。スポーツドリンクを注いでくれた。

頭の下には氷枕。


鼻先には味噌の香り。

そして、畳の匂い。



麻子さん以外の従兄弟たちは、都会に出て。

麻子さんは、と言うと、この、祖父母の家に暮らしているらしい。


すでに、おばあちゃん、何年も前から施設に入ってて住む人いなくなると、困る言うからさ、と笑い。


大丈夫そうなら、と断りながら。

「夕飯はどう?」


顔色を確認しようと近づく彼女との距離に、ドキドキしながらいたら、腹が鳴り。


くすくす笑う彼女。


全く、正直なお腹に、今度は恥ずかしく、冷や汗しながら、それでも。


「是非、お願いします」


口で、ちゃんと応じて。



二人の食卓。

広い部屋に小さなちゃぶ台と、畳と、大きなテレビ。


このテレビは目を悪くしたおじいちゃんおばあちゃんが見難いと言い住んでいた頃買ったから、大きすぎるけど、とか。


幸晴君、大学受験どう?何処行くのとか。


話しかけてくれる、彼女の顔を見たら。

脳内危険信号点灯しっぱなし。


男子校の、高校生に、美女と2人きりは何は無くっても、体温上がってしまうって。

テレビドラマを一緒にどうかと言う誘いも。


お風呂どうぞ、も。

お風呂上がってたから、大丈夫だよ、も。


多分、八年前と同じに言うだろう、麻子さんには悪いけど。

八年前とは違うからさ、死ぬってくらいに心臓にくるし、とは言わないが。


先どうぞと、勧められたまま、シャワーだけして。

さっさと、引き上げる。

敷かれた布団も、誰が敷いてくれたと思い出したら悶えるばかり。


まさか、ホテルに泊まらなかったばっかりに。眠れない夜を過ごすなんて。





法事の席。


つつがなく終わり食事を取る中。

親戚の俺の叔父の、子と言う、あまり知らない男が。


何か、あったか?と、麻子さんとのことを探りに来たが。

何もない。どう過ごしたかなんて本人に聞けばな話だが。


麻子さん自身に話しかけても、つれないからと、話のキッカケ探し、かつ、嫉妬からの牽制込みの話は。


麻子さん本人が俺と、彼が話すところに現れて尻すぼみ。


帰りの電車の時間に車で送るからと、

俺に用事だって事にまた。

要らない恨みを買った気がしたが、仕方ない。


またしばらく会わない、親戚の人だから。







田舎の電車は本数ないからと。

より本数多く停車する数駅先、の駅まで送って貰う。


ありがとうと、自分から向かうと。

待ってと、車の荷台から紙袋。

一つはお弁当、一つはお土産、と。



「お世話になりました」

「いーえ、一晩だけだし。次来る時は是非ゆっくり泊まりにおいでねー」




乗り込んで。

手を振る姿も見えなくなってから。


ふと。

紙袋の中を覗いた時。


昨日、しか直視出来ずな筈の、彼女の顔が浮かんで。

それは、紙袋から、彼女の住むあの家あちこちから漂う柔軟剤の香り。


気をつけてお帰り、と書いた紙からもする匂いが。

何度も彼女を思い出させるから。

紙袋に押し込んで、思い直して手持ちの鞄のポケットに押し込んで。


一つ目のラップで握ったおにぎりを、一口。




幸いこの車両の乗客は俺だけ。

昼過ぎで夜には早い中。


まだ少し温いおにぎりは、優しい塩味がした。



-お仕舞い-


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【後書き☆ある、書いた日の今宵の話を】


人は意外と見ていると思う時、大抵自分が弱っていたり、疲れていたり。

気が回せない時に。


できてない指摘や、

しといたよ、みたいな助けの手が来たりして。


意外と人は、自分を見ていたりするんだなぁと思いますが。


来た指摘、来た助けどちらにも。

穏やかにお礼が言える精神力、

これを持っていたいなあと、内心自分に精一杯で他人を気遣う余裕ない時、感じます。



だって荒立てるなんて、自分がかなり度量のちっちゃい人に、感じて。ますます、自己嫌悪しちゃうから、せめて、と。


まあ、私だけ?違う?わからないけど。

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