第29話 杏奈の過去を知る男との話し
「お前の母さんって昔、少年院や刑務所に入っていて前科一犯なんだぞ!」と言われた、息子が家に帰ると杏奈に訊いた。
人の情報はどこで過去の接点と繋がるか分からない。たまたま杏奈が昔、付き合った男の兄弟が息子の同級生の父親だった。杏奈も面識はあった。人生は本当に“禍福は糾える縄の如し”だ。折角、掴んだささやかな幸せも何処かで割れたガラスの様に音を立てて崩れていく。良い事も悪い事も一緒にやってきては乗り越えて、その繰り返しが人生なのだ。
杏奈は瑛太と息子に内緒でその男の家に行った。
「ピンポーン!」ドアを開けた男性は杏奈を見て、「おっ、久しぶりだな?」と言った。
杏奈の殺気立った雰囲気に男は驚いていて、彼女に何かを言われるものと思っていた。しかし、杏奈は男をずっと哀しく憐れんだ目で見ていただけだった。
「何か言いたい事があるなら早く言えよ!」と男。
「私の過去も含めて、うちの旦那は受け入れて結婚してくれたんだよ。だから何にも怖くないんだよ。息子もそうだよ。小学生だけどすべてを分かって受け入れてくれているんだよ!」
「だから何だって言うんだよ!?」
「お前みたいのを男は人の不幸が楽しくて過去しか見られない、腐った人間中の最低のクズって言うんだよ!」とそれだけ言って杏奈は帰った。
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