第24話 『気』

「強くなりたい君たち二人にいい知らせがある。」その一言に、カエデの心はたちまち好奇心でいっぱいになり、アーサーもその期待に目を輝かせた。


アレクはキャンプの火の静けさを一瞬壊すかのように、「嬢ちゃんとちび助、2人一緒に戦う方法がある」と続けた。

それを聞いたカエデとアーサーは、「でも、私たちいまも一緒に戦えるよ?」と素直に応じた。


アレクは軽く頭を振りながら、「いや、そうじゃない。もっと特別な方法だ。」と含んだような微笑を浮かべた。

「【2人融合して1人になる方法】があるんだよ。」


その言葉を耳にした瞬間、カエデとアーサーの瞳は大きく開かれる。

彼らの中には、自分たちが抱えてきた夢が新たに輝き始めた。

「ど、どうやって!?」カエデは声を弾ませ、アーサーも同様に躍動感を抑えられない様子で早く教えて欲しいと言葉を続けた。


アレクはその熱意に応えるように瞳を細めたが、すぐにその期待を通り越させないような冷静さで語りかけた。

「そのためには、まず準備が必要だ。『気』ってわかるか?」


「『気』ってなに?」




アレクは、キャンプの焚き火のそばでカエデとアーサーを見つめながら、残り火で影が踊る中で静かに説明を始めた。


「『気』とは、君たちの中に流れる生命エネルギーのようなものだ。」彼は手のひらを開き、深呼吸をするように目を閉じた。その瞬間、彼の体から目には見えないエネルギーが発せられたかのように、周囲の空気がぴんと引き締まった。


カエデはその変化を確かに感じ取った。「なんだか不思議…。でもすごい!」と、彼女の目はますます輝きを増した。


「ほーこれでも感じるのか」アレクは感心しながら続ける。


「『気』をうまく扱えば、それを攻撃や防御に使うことができるんだ。それに、身体能力を向上させたり、物に流し込むこともできる。」アレクは説明しつつ、足元にあった小石を拾い上げた。


彼が小石を軽く握ると、それは微かに白い光を放った。アレクはそれをカエデの後ろにある木に軽く投げた。石はカエデの顔の横をゆっくりと放物線を描き通り過ぎ、木にめり込んでいった。カエデは思わず冷や汗をかき、少し動揺した表情を見せた。


アレクは続けて、「ただね、『気』には放出できる総量が決まっている。だから、うまくコントロールして使う必要があるんだ。」と言いながら、自分の右手に「気」を集中させた。するとその腕は、素人のカエデが肉眼で分かるほど、燃え上がるような真っ赤なオーラのようなものに包まれた。


その後、その真っ赤なオーラが腕から体全体に広がっていき、今度は黄色のオーラに包まれていた。集中していた右腕ほどの強さは見えず、使用する部位に重点を置くことが重要であることを示した。


アレクは話をまとめ、「まあ、そんなところだ。興味があれば、明日でも来な。教えてやれるぞ。」と微笑んだ。


カエデは目をキラキラさせ、嬉しさを隠せない。「ありがとうございます!絶対に来ます。」


アレクは「ちょっとこの後、調査がある」と告げ、準備を整えるとカエデとアーサーに別れを告げた。彼の姿が滲む夕焼けの森の中へと消えていく。


別れると、カエデはワクワクした気持ちのまま、ダリルにアレクと出会ったこと、そしてこれからの修行のことを伝えたいと強く思った。彼女はそのまま、心を躍らせながらダリルのいる宿へと足を進めた。新たな冒険と成長への期待が、彼女を更なる高みへと導くことを感じながら。

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