転生したら〇〇だった件というテンプレが嫌いな俺が異世界転生して魔法少女になった件

中村サンタロー

第一話 私……いや俺。魔法少女になる。


俺は所謂、匿名掲示板に常駐するキモオタだった。

しかし、その日は訪れた。

俺が魔法少女になる日だ。


夏休み……

俺は暇つぶしに開いたなろう小説を閲覧する。

「またか……」

どいつもこいつもテンプレ異世界転生しやがって。

やらスライム。やら獣美少女。

もういい。俺がこの腐り切ったテンプレ世界を変えてやる。


「さてとタイトルは……転生したら兎だった件とかどうだ?」

俺は四苦八苦する。しかし才能のない俺には無駄な徒労だ。

「転生したらうんこだった件……あーもうダメだ!俺に才能はない!」

ついに痺れを切らした俺はまた匿名掲示板を開く。

「なろうとかクソだろ!あんなの読んでる奴はくそ!っと」

俺はスレを立てた。

本心ではわかっているクソなのは俺だ。

そんな時そのレスが返ってきたのは今思えば必然だったのかもしれない。

「お前転生できないの?」

なんだ?ネタレスかな?ふざけやがってガキか?

「転生なんて出来るわけないだろ!ふざけんな」

俺はそうテンプレみたいなレスを返す。

そして返ってくるレス。

「できるぞ」

「ほう?やってみろよks」

俺がレスバを始めたその時だった。

目の前の景色が草原に変わっていた。

「なんだ?ここはどこだ?」

「あなたは選ばれたのです……さぁ新たな人生をスタートさせましょう」

そこにいたのは女神みたいな奴だった。というか恐らく女神。

「選ばれたって……どういう事だ!誰だお前なんのドッキリだよ」

「私は女神。あなたをずっと見ていました」

「きめーな……」

俺はついそう返す。

「き、キモいですって!?貴方いつも匿名掲示板に常駐してクソスレ立ててますけど……どちらがキモいんです?」

「ぐぬぬ……」

俺は女神に論破される。

そして女神の二言目。

「そうキモい貴方は実は世界を救う魂を持つ者。"クリア"なのです。今こそ転生の時……」

「そんなの嘘だろ!信じられない!」

俺は当たり前だが信じない。

女神はその反応を分かっていたかのように言葉を返す。

「別にいいですよ。今から起きる事は避けられない運命なのですから」

「な、何のことだ?」

その次の瞬間、女神は両手から光を放ち始める。

その光が俺を包み込む。

俺の意識は遠のく……


ドクン…………と脈を打つ音が心臓からしたのを感じた。

俺は目を開ける。

「ここは……」

辺りを見渡すと四畳半の部屋の様だ。

しかしどこか変わっていた。

明らかに俺のじゃないであろうピンクの犬の人形やお洒落な壁掛け時計がある。

その時だった。

「ペスカ!早く起きなさい!」

二十後半の女性の様な声が聞こえる。

そして俺はあの女神の言葉を思い出す。

「新たな人生をスタートさせましょう」

まさかな転生なんてあるはずが……

「早く!」

その声が大きくなるのを感じる。

「め、めんどくせーな」

俺はそう呟きながら部屋のドアを開ける。

そのドアを閉めるとドアに掛けてある飾りに名前が書いてあった。

「ペスカトーレ……」

俺はそうその文字を読む。

なんだろうか。と、とにかく下に行くか。


階段を降りた先にはテーブルが並ぶリビングの様だった。

「朝御飯が出来てるわよ。あんたいつまで寝てるつもり?」

「だ、誰だよ!!」

俺は言葉を荒げる。

「誰って私よ貴方の……ペスカのお母さん。どうしたの?」

「ペスカ?」

「ペスカトーレ。貴方の本名でしょ?」

その女性は俺をペスカトーレと呼んでくる。統合失調症でも患っているのだろう。可哀想に。

俺はその可哀想な人に言葉を贈る。

「糖質患者はな、はよ病院行け。俺は部屋に戻るぞ!あばよ!」

俺はそう声を荒げて階段を上がる。

今日は変な夢でも見ているんだろう。


「ちょっとペスカ!戻ってきなさい!」

「嫌だよ!じゃあな」


俺は階段をまた戻る。

そしてペスカトーレと書かれたドアを開ける。

そしてそこにあったベットにうつ伏せになる。

「何処なんだよここは……くそ」

ってかこのベット絶妙にいい匂いがするな。

ふと俺はその匂いに釣られて横を向く。

等身大の鏡があった。

そこに映るのはいつもの俺の不細工顔ではなかった。

桃色のストレートの髪。目鼻整った小さい顔。

「え……」

俺は驚き鏡を見つめる。そばに立ちその身体を見る。

身長は中学生くらいだろうか?

服装はよく分からんが女の子用の学生服だった。

その時、ドアが思いきり開く。

「ちょっと引き篭もるつもり!?って何やってんのよあんた鏡なんかじっと見て……気持ち悪っ!」

「キモいとはなんだよ!べ、別にいいだろ……」

いや、なんだこの雰囲気。

「確かにいいんだけど……ちょっと不気味だったわ。とにかく学校行きなさいよね!」

バタンと扉が閉まる。

なんでこう世のお母さんってのはみんな学校に行かせたがるわけ?行くかよバーカ。

そう思った後に俺はついに悟る。

「ってか……あの女神まじだったのか。俺は転生しちまったわけだ。しかも女の子に」

よりによってテンプレ嫌いな俺が。

これは神……いや女神からの皮肉とでも言うのか。

「それはそうとさて……脱ぐか」

決まっているだろう。これは。

男ならやるさ。

へへっ。

俺は制服に手を掛け一枚一枚と脱ぎ始める。

中学生とは言え少し豊満なその胸が露出する。


「エッッッ。絵じゃない。何つって」

そんな事を呟きながら俺は笑ってみる。

鏡に映る俺というか私……なのか?

この女の子の一人称は知らないけど可愛いぜ。


さてと次は下の方を……

その時だった。何やら電子音が部屋に鳴り響く。

これは電話か?

ふと辺りを見渡すとベットに置かれた電子に光る物体を見つける。

それは透き通るクリスタルでコーティングされていた。

スマホの様に画面があり、光っている。

スマホじゃねぇんだろうけど……スマホみたい。

「よく分かんねぇけどこれでいいのか?」

適当にボタンを押すとその電話はつながった様で声が聞こえた。

ってか俺すげぇなこんな謎の機械扱えちゃうなんて……

「もしもし。ペスカ?変なの……何か。助けて!キャアアアアアアア!!」

「ど、どうした!お、おい」

プツンと音を立ててその電話は消えた。

「こっわ何これ」

俺は怖くなりその機械を放り投げる。

するとさっきのお母さんの声が聞こえる。

「まだなの?早く行かないと遅刻するわよ!」

どうする?さっきの電話……恐らくこの俺の転生先の子の友達だろう。

ヤバいだろ言わなきゃ。

「いや……それより俺……私の友達がヤバそう!!」

成り切れ……役に……

「何がー?」

そう何事もない様な感じでお母さんは返答する。

俺は焦って続ける。

「さっき電話が来て……友達が緊急事態!」

「え、もしかしてユキのこと?」

「し、知らんけど……いや多分そう!とにかく場所教えて今から行く!」

俺はノリで押し切る作戦に出た。

お母さんはその俺の焦りっぷりを見て思わず場所を話す。

「えっと……まさか忘れたの?嘘でしょ。家から出て左に真っ直ぐ。そしてお嬢様の大きな家がある。すぐ近くでしょ!もう」

「サンキュー!」

俺はこの緊急事態に呑気な母親に若干殺意を沸きながらダッシュ。

今の状況……客観的に見たら男走りしてる美少女の姿があっただろう。

そしてお嬢様の家らしき物を見つける。

こんな豪華な家、正直引くぜ。異世界にありそうだ。それ以前にここ異世界か……

そんなことを思った後、俺は門を開けようと近寄るとそこの横には黒いメガネをかけたガードマンが二人。

「君、誰だい?」

その言葉に俺は少々考える。

そして答える。

「ユキの友達です!今そのユキが大変な事態に陥ってると思うんです!」

「証拠がないねぇ」


くっそ……俺はついにキレる。

「開けろってんだろが!!」

すると俺の胸……というか女の子なんだけど。

と、とにかく何やら光出した。

「な、なんだこの光は……くっそ!!」

ガードマンは目を瞑る。

なんだ……異世界特有のご都合主義発動か?

とにかく助けねぇと。


〜第二話に続く〜

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