アイスクリーム屋さんのアルバイト
雛形 絢尊
第1話
「君さ、目玉食ったことある?」
面接でそんな事を聞かれるとは思ってもいなかった。
「目玉ですか?」
と私は困惑しつつも尋ねた。
「そう、目玉」
「この目玉ですか?」と私は私の眼球を指差した。
「勘がいいな、そうそうそう」
「ないです」
面接官である彼は笑いながら「ないかー」と言った。
私は面接に来た。至って普通のアイスクリーム屋さんですと求人情報に載っていた。
本当に至って普通の給与、
至って普通の情報が載っていた。
目玉、と私は頭の中で繰り返す。
「採用」
私は疑問が残ったまま採用された。
都内の街角に佇むこのアイスクリーム屋は
週に3日ほど開店する。移動式アイスクリーム屋さんだ。しかし移動する事なくこの場所にあり続ける。
週の半分以上はシャッターが閉まるのだ。
面接官の彼は島田と言った。
彼が面接の後、そのまま仕事の流れを教えてくれたのだ。
至って単純。顧客に言われた味、サイズの量のアイスを掬い、カップに添える。それでスプーンをつけたら完成。簡単だ。
「じゃあ明日からワンオペだ。よろしく」
そんな、なんて言える余地がなかった。
私ははあと返事をした。
「これ味見してみ」と彼は見本で掬ったアイスクリームをくれた。チョコレートのような見た目をしている。
私は目玉、その言葉が頭を反芻している。
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