第2章|知る者、知られざる者
第2章:第1節|友達の定義
フェリアルは祖母——リリアネット・エル・マターナのことを心配していたわけではなかった。フェリアルが家に帰ると祖母は夕食を準備して待ってくれていた。
「大変だったってねン」
二人の住む家は、城からも城門からも離れたところにある。祖母は用事が無い限り、城下町には滅多に行かない。孫との剣の修練はできるが、数キロ歩き続けるというのは、もう体に堪えてしまうのだ。
「はい。……とても大変でした」
「帰って良い」と団長から言われ、騒ぎにならぬよう、帰り道は慎重に選ぼうとしたがその心配は取り越し苦労に終わった。
メルトリオット通りは、その真ん中を封鎖していた。第二から第四までの騎士団員たちが、これから交互に警備をするそうだ。第一騎士団は城の警護を続けるらしく、フェリアルは特に勤務の変更はなく、当初の予定通りの時間で、お役御免となったのだ。
明日以降も『白い光線』が連発する、みたいな事態であればそれも意味を成さないだろうが、そうなってはもう問題はこと大きな事態となり、フェリアル一人の手や頭では、とてもじゃないが対応できない。ウェルド大陸全域に関わることであったり、シンカルン王国の歴史に関わることであったり、『
壁に掛けられた、自分の剣を見る。
国からの存在証明。フェリアルができることなんて精々、あの柄から先端が届く範囲だ。
窓の外はもう暗い。
ランタンの灯りと、天井から吊るされた小さな稲妻の捕らわれた、「電気蛍」という魔道具だけが、薄暗い空に囲まれたこの家に寂しさの混じる夜の中でも、微笑な安寧を保っていた。
「小難しいこと、考えてるねン?」
向かいに座った祖母が、スプーンを手に呆けているフェリアルを見て、微笑を浮かべた。
「いえ。でも……分からないことが多過ぎて、まだなんとも言えないし、考えられないな、と」
「世界ってのはそんなもんさねン。剣を振ってたあの日なんてねン、遠くのことに思えてくるけど……実際まだ握り続けて、それが苦にも楽にも、もう感じン。良くも悪くも、腕は鈍っても心は鈍らン」
時折、リリアネットはこういうことを言った。昔を懐かしむような、昔を置いてきたような、曖昧にも取れることを。しかしまだ、なにかの意志を示したいようにも思える、彼女の言葉を。
「トーウェンタリス師団長が『あなたは当分、逝去する気はなさそう』だと言ってましたよ」
「おら? 元気やったン?」
「ええとても。まだ私のことを、『
「そりゃそうさねン。あいつンまだ杖握ってんなら、この老婆もまだ剣は握れるンよ。……あいつン話聞いたら、俄然そン気になってきたさねン。また明日もやるかい?」
「勿論です。一本取るまで、終わりはありません」
女騎士の顔同士で、互いに見合う。
この日常を、護らねばならない。
朝起きて。
祖母に一撃を喰らい。
城下町を歩く。
待っていたであろう、人々の叫びは遠く。
伸ばされた手を取ることもできず。
腰から下げた金属は、意味を持たぬお飾りのように、ただ重く。
よく晴れた空は、陰鬱なる人々の視線を溶かし。
ただただ、淡く時間が流れるのを待つばかり……。
「——ていうテンションで、出勤すると思ってた」
ヴァシーガは「朝ご飯」と言って、サンドイッチ片手に城門で待っていた。
「流石『
むしゃむしゃもぐもぐと。
出勤したばかりのフェリアルは、ヴァシーガと連れ添って歩く。
日頃、副騎士団長として早めに出勤するフェリアルは、今朝少し、早めに家を出た。昨日の事件と同じ時刻になにか発生するのでは、という疑いもあったし、通りが混むだろうとも思っていた。
そして案の定、城門から先——メルトリオット通りで出待ちしていた住民たちに嘆きを浴びせられた。
昨日痛感した。騎士としては、直接的にできる手立てがない。
予定変更だ。
城にいたとて、できることには限りがある。『白い光線』は触れたら終わりなのだ。目の前で現れようなら止められる可能性が低い上、フェリアルは騎士だった。目の前の人々を邪険にもできない。
というわけで潔く、住民たちのケアに周ることにしたのだ。
顔見知りから順に「今調査中だから、辛抱を」と言い回り、顔見知りの連れにも片っ端から手を取り「大丈夫じゃないかもしれないけど、調査自体は進んでる」と根気強く言って回った。「事件の詳細については守秘義務があるけど、王国の意図したことじゃないってことだけは言えるから、それだけは分かって。なにか知っておくべきことがあったら、発表があるから」と。
それはもう、辛抱強く。
熱心に。
寄り添い。
共感し。
慰める。
できることをした。
警備をしていた数十名の騎士団員たちがその姿に関心し、やがて少しばかり以上も、圧倒を超えて
その時間はかなりかかった。寝坊助自由人非出勤日のヴァシーガが、のんびり朝飯片手に、城門の傍で待っていられるくらいに。
「騎士だから。できることをしますとも」
「いやん。やり過ぎてて、あたしも普通に引いちゃう」
「副騎士団長だから。求められる立場が違うんで」
「おぉっ? 言うようになったねぇ、マターナ副団長も」
そう。
軽口を叩けるほどには、心身に自分なりのケリをつけている。
堅牢な剣らしく。
血統の騎士らしく。
フェリアルを待っていたのは、ヴァシーガだけではなかった。
「へんタ——ヤンドールさん」
「今、変態って言いかけました?」
「へんなタイミングで会いましたね、と言いたかったんです」
「……奇妙なことを言いますね」
二人のやり取りを見て首を傾げるヴァシーガ。よくよく考えてみれば、どうして私が詰められてるんだろうか?
ヤンドール・ワイ・グレアットは、今度はきちんとローブを着て、さらには外套として正式に支給されている第三魔法師団のマントも羽織り、書類と本を抱えて、城への入り口である巨大な玄関前で待っていた。フェリアルが手の甲を見せると、門番兵が仰々しい音を響かせ、両開きのドアを開ける。
「モルダルクさんも、おはようございます」
「おはよう。なにか用事?」
「ええ。マターナ副団長に、ですが……」
フェリアルに向けて、一枚の紙を渡す。
「今朝の報告書です。おそらく、最終になるかと」
「最終?」
「はい。つまり……これ以上の更新は無いかと」
ヴァシーガの顔を見ると、少し節目がちに肩を竦めた。第三師団も第四師団も、どうやらお手上げのようだ。
「ホントに、
ヴァシーガが呟くと、ヤンドールは眼鏡の鼻当てを押した。
「その類かと思い、朝から貴女を待っていました。……貴女たちを」
フェリアルはふと思い付いて訊いた。
「……私たちが、古代術やら呪いやらを調べるってことを、期待してた?」
「ええ。昨日からの続き……では、ないのですか?」
「異種間交配」の本を読んでなにかの参考にし、事件現場で露出癖を晒し、別の部署の副騎士団長を待つ……。
静かな廊下を、三人は歩く。
「ひょっとして、友達いないの?」
「ヴァシーガ」
「友達の
……なるほど。
悟ったような顔を浮かべていると、
「冗談です。本件は友人知人といるよりも、お二方と一緒の方がなにか成果があるかもしれない、と踏んだだけです」
……なるほど。
数字がわずかに変わっただけの報告書を眺め、フェリアルはその理由を察した。
書かれているのは既知の情報、もしくは想定内のみだけ。ヴァシーガもひと目見ると、「あーね」と興味無さげに漏らした。
「とりあえず、どこ調べる? ベルテン卿の部屋? また図書館? まさかまだ、メルトリオットに行くとか言わないよね?」
「メルトリオット通りは、これ以上の情報はなさそう。大人しくベルテン卿の部屋に行こうかと。一回、団長に挨拶だけしようかと思ってるけど」
「それでダメなら、図書室に行きますか?」
…………。
本当に、念を押すために言っておく。
「そうなるかも。念のために言っておくと、性的なことを調べに、ではないです」
「そそそそ、それは当然ですとも。ええ。たしかに。はい」
瞳に映るのは心だと言う。ヤンドールは視線を隠すよう、眼鏡をクイッと押す。
不思議そうに見ていたヴァシーガは、ふと気付いたように訊く。
「……ちなみに、友人知人はいるの?」
「ヴァシーガ?」
「……友人知人の、定義によります」
……なるほど。
ヴァシーガ・ブイ・モルダルクという女はこういうとき、意外と勘が鋭いのだ。
事件現場では、ボーッと突っ立っていても仕方が無い(かと言って『脱ぐ』のもどうかとは思うが)。
ベルテン卿の部屋は二十四時間前と、なにも変わっていなかった。
「『
本を開き続けることが苦痛、とでも言いたげなヴァシーガは、机に這うようにして気の抜けた声で言った。
「なに? その格言」
「魔法師団で使われる言い回しです。——『全ての魔法はペンによって紙の上で造られ、されど常に新しくなろうとも、最後まで紙に収められる』——みたいな意味です。昔から伝わって…………なるほど…………」
本を捲りながら、ヤンドールが答える。
その視線は、分厚い『人体と異種族の相互作用』を、熱心に凝視し続けている。
なるほど。
二十四時間前と同様、積み上げた本に囲まれる三人。二十四時間前と同様、そんな三人に視線を送る人々。
「……もしかしてあたしたちさ、この事件解決するまで一生ここに通うとか、ないよね?」
「さて。それは神のみぞ知る、でしょう」
フェリアルも、微妙に見当違いな情報ばかり開いては「読んだ本タワー」に積み上げるのが、段々と苦痛になってきた。二十四時間前だったら、あと数十分くらいで、誰か訪問者が来るのだが。
「——物語なら、せめてあと2章分くらいで、次の展開に行ってほしいものね」
今日の訪問者は、昨日とは別人だ。
トーウェンタリスは三人に笑いかけながら現れた。手には一枚、なにか——三人が期待しても良いかと疑う、なにかの紙を手に。
礼節として三人は立つ。左手を右肩から左腰へ掻く。
「いいのよ。そんな
ほらほら——と。勧められるまま座ると、第四魔法師団長も腰掛けた。
思った通り、紙をフェリアルに差し出す。
「外交部が正式な書状を出したわ。今朝の報告は……まあ、見たと思うけれど……その結果を見て、匙を投げたのね。シンカルンでは手に負えない」
「まだ一日ですよ」
ヴァシーガは不服そうに言ったが、
「もう一日以上、経ったのよ」
と、トーウェンタリスに諭された。
「今日は無かったけれど明日は? 明後日は? 来週? それとも来月? 次発生したときに『前回は調査しましたが、何の成果もありませんでしたー!』じゃ、シンカルンもメンツが保てないってことよ。これに乗じて攻撃されたくもないしね」
トーウェンタリスは流れるように言ったが、国同士の争い事が
渡された紙を見ると、十の国のうち外交が可能な国の八つに、既に書状が出したと記録されている。実際にそれぞれの国土まで書状を送るのは数日掛かるだろうから、各国から派遣されている席のある外交大臣が受け取った、というのが正しいだろう。遠く離れた場所に物を送る、みたいな魔法があれば良いのだが、空間転移や情報投射なんて魔法はない。少なくとも、フェリアルが知る範囲では。国土本地には早くて明後日、遅くても来週末辺りには届く。もしこれ以上の進展が無く、他国の手を借りなければならないのであれば、早いに越したことはない。
「まあ万に一つも、他国から誰かが派遣されて来るなんてことはないでしょうね。きっと『お互いに健闘を祈る』って言い合うだけの、書面交換で終わり」
大人って面倒だわ、と。トーウェンタリスは嘆くよう言った。
国同士に助け合いの精神はない。適材適所であると同時に、それは無関心でもあると思われる。特に、
バタン。『シンカルン王国建国記念典』を閉じたヴァシーガは、欠伸しながら。
「単純な助け合いくらいすれば良いのにぃ。シンカンが遺書とか残してないんですかねぇ。——『シンカルンに恨みはありませんよ〜』とか」
「それ、シンカンが宣言しないといけないの? というか、論点がズレてない?」
フェリアルが言うと、
「仮に宣言するとしても、今の国々が宣言するべきでは? 遺書である必要はないかと」
ヤンドールも続き、
「シンカン側にも言い分ってものがあるだろうし、そもそも
トーウェンタリスも他人事みたく笑った。
「……みんな明け透け言うじゃん」
三方向からの否定を受けたヴァシーガ。…………?
「——
フェリアルに訊かれたトーウェンタリスは。
「ええ。シンカンだって、冤罪や名誉毀損、愚弄され続けようものなら、流石に姿を見せると思うわよ?」
何の事無しであるかのように、言った。
同じくヴァシーガが、静かに驚いていた声のまま訊く。
「……えっ? シンカン、って生きてるんですか?」
「そりゃ、死んでたら大問題よ。神だって次のシンカンを選ぶだろうし、死んだ原因がシンカルンにでもあれば、シンカルンが滅んでたか、もしくは多種族による統治国家にでも成っていたでしょうね」
ポカンとしたまま聞いてた三人。
「で、でも……
ヴァシーガのその顔を見て、なにかに納得したように、トーウェンタリスは軽く頷いた。
「……嗚呼。そうね。『
「……詳しく、教えて貰っても良いですか?」
「難しいわね。詳しく、って言われるほど、私も詳しくないわ。それに残念なことに、国はこういう発言を公にすることは、あまり認めないと思うの。王様に謁見して運良く解雇、悪けりゃ死刑。折角この年まで生きたのだから、私は
トーウェンタリスの言葉は、『大人って、面倒だわ』をよく体現していた。ヤンドールは気づかなかったし、ヴァシーガもなんとなくで感じているだろう。
フェリアルは言い直した。
「ならざっくりとで。たまたま風の噂で聞いたことがあれば、教えてください」
その言葉が隠喩であったのは、流石の
トーウェンタリスは満足そうにウィンクをする。
「少し、散歩に行きましょう」
「差別する気はないんだけど、一応マターナ副団長だけ、ついて来なさいな」
トーウェンタリスには思惑があったらしく、そして一介の
「ちょっと通りを見てくるよ」
二人を城の外へ見送ってから、フェリアルとトーウェンタリスは、城の庭に出ていた。昨日フェリアルが一人反省会をしたベンチに、今日は二人で腰掛ける。
「風の気持ち良い季節よね」
「そうですね」
「
「いえ、気にしませんよ。そうですね……地下とか水中とかよりは、風の方が好きかもしれません」
「そう。その勢いで、魔法も使えたりしない?」
「今度試してみましょう。結果は、これまでと変わりないと思いますが」
しかしその噂は、シンカルン王国の「人間」には証明できない。
シンカンの事実を知らぬように。
「本題に入ってもよろしいでしょうか?」
「……お真面目ちゃんねえ。もう少し高齢のお喋りに付き合っても、と言いたいところだけれども、第四魔法師団長としては、私もそろそろ腰を上げないといけないのよね……。それじゃ
周りには誰もいない。
王国の変事中。城のお庭で日向ぼっこなんて、誰かに見られれば舌打ちでも受けそうなものだ。明後日くらいは誰かと夜警でも代わろうか。そんなことを思いつつも、折角の機会。逃したくはない。訊くだけは訊いてみる。
「……シンカンは『
少し面白がるように、興味深げに、トーウェンタリスは頷いた。
「……そうよね。そこからよね……」
「はい。国の成り立ちは、その詳細は教わっていません」
「目の前に生きることも大事だけれども、歴史の話も大事よ。機会があったら、これからも図書室に通うと良いわ」
「そうします」
「第四師団にも、遊びに来て頂戴」
「機会があったら、是非」
「さて。聞きたいであろう答えを、まず言うわね。シンカンは確かにそう。戦神を殺したわ。これは明白で、明確な事実よ」
「疑うわけではありませんが、証明できる証拠がありますか?」
「良い着眼点ね。城の地下道の端に、
「なるほど」
「そして、シンカンの慰霊碑は無いわ。これがシンカンが生きているであろう証拠よ」
「……それぞれの国にあるとかは?」
「そうだとしたら、シンカルンからの慰霊訪問があるはずでしょう? 少なくとも書状は送る。私の務めたこの数十年で、慰霊訪問は一度も聞いたことが無いわ。これも外交部に確認すると良いけど、シンカンに対して、慰霊に類する書状の送付はないわね。確認したから保証するけど、一つもよ」
「では、『
「……そこがネックなのよね。記録はあるけれど、その具体的な詳細は知られていない。というよりも、記されていない、が正しいかしら。これに関しては、情報源として記録されている
「再三、疑うような口振りで申し訳ありませんが……どうしてそこまで詳しいのですか?」
「んー……そのメタ視点的な目ざとさ、ホントに
「元は知らなかったと?」
「貴女が貸してくれた本の、シンカンの
「それは……ありがとうございます。私たちももう少し、色々と詳細を調べるべきでした」
「良いのよ。年寄りのお節介だから。いざとなったら、動けるのは貴女たちの方なんだから。面倒ごとは、大人に任せなさい」
フェリアルは、成人してから数年経つ。ヴァシーガも同じ歳であり、ヤンドールは二人よりも少しだけの歳上だと考えると、やはりトーウェンタリスは、圧倒的に知見が違う。祖母の知り合いというだけあって、やはり頼りになる。
「神も『シンカン』も、この500年は姿を見せてないわ。少なくとも、私の知る範囲では。ウェルド大陸が危機だというなら、そちら側も行動を起こすはずだけれど、誰も彼らを知らない。シンカルンでは特に」
「つまり無関係か、もしくは、本件は神の介入は必要ない事象だと?」
「ここまで語って検討外れっていうのは、それはそれで癪だけれど。でも、長年信仰のない状態で発展してきたシンカルンを思えば、今さら縋るようなこともできないし、それこそ今の王政なら、シンカンの関連事象なら他国の所為でもあると言えるでしょうしね」
「図書室で本を探していたとき、シンカンの情報は殆ど見当たりませんでした。これも所謂『プロパガンダ』ですか?」
「でしょうね。必要な記述か記念法典とか以外は、私たちの祖先たちが全部まとめて消してしまったのでしょう。最低限だけ残すとかで、あとはまとめて隠しちゃえば、国民は知らずに忘れていくわ。幸か不幸か、500年間は、この国で姿を見ていないわけだしね」
「どこかで既に死しているとかは?」
「神の顕現者よ? 神殺しができるほどの特殊で強力な
シンカンが関係しているとして。ウェルド大陸への恨みとして。『白い光線』が
シンカン、もしくは他国他種族のメリットは?
——中途半端な攻撃の理由は?
——城内から、どうやって?
妙に……
その考えがあくまで仮定だったとしても、あまり納得はいかない。全てに説明がつくほどの情報が、相変わらずこの手には無かった。
「厄介な話ですね」
「そう。だから個人的には……無関係の方が好ましいわ。消えた200人には申し訳ないけれど、
そういえば、トーウェンタリスとベルテン卿は年齢が近い。ベルテン卿に関しては団長の報告書に書いてあった気もするが、誰も特筆すべき情報は持っていなかったためか、噂ではただの
「ベルテン卿は、どんな人でした?」
「彼は普通に、
トーウェンタリスはローブの内ポケットから、一冊の本を取り出した。小さなメモ束のような、片手で収まるほどの本だ。
「これは『
手渡されたその小さな本を開くと、中はどのページも白紙だった。
「所有者として認められた者以外は読めないわ。そしてその本は、記載する内容を増やせるようになってるの。個人で発明した魔法とかをね」
「——『
「そういうこと。彼は良くやってたわ。人柄はそれなりだったけれど。……でもまあ、
トーウェンタリスは、どこか寂しげに言った。
「死しているとなると、それはそれで勿体無いわね」
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