お願い、付き合って!
虹空天音
第1話
「ねえ、私がもし、トオルに付き合ってって言ったらどう思う?」
私は少しドキドキしつつ、そう聞いた。目の前の美男子、トオルくんは、「えー?」と笑いながら返事を考えている。
口では「トオル」なんて呼び捨てにできるけど、内心ドキドキしっぱなしだから、とても心でも呼び捨ては無理。
トオルくんの反応を見ているだけで、幸せな気分。
……トオルくん、なんて答えるかな。これで本気にしてくれるかな。今まで幼馴染だからって茶化されたけど、私たちも中学生。さすがに恋愛対象のはず。
お願い……!
「う~ん、どうだろ。カレンは幼馴染だからなー! 付き合うって不思議な感じかもな。ちょっと戸惑うかも」
「……え?」
「遊ぶの楽しいし……あ、そういや、あのゲームの最新イベント、参加したか⁉ 俺あれ、最後のレアだけ埋まんなくてさー。カレンなら埋めてるよな⁉」
もちろんトオルくんのために何時間もスマホを見て、レアは当然、スーパーレアもウルトラレアも埋めた。
何百回もガチャ引いて、お小遣いでやりくりしながら全部埋めたし、クマを隠すのも、トオルくんのためなら苦痛じゃない。
だけど……そっか、私はまだ、トオルくんの恋愛対象じゃない。
「幼馴染」もしくは「友達」のまま。……そんなのやだ。
「……埋めたよ。放課後見せよっか?」
「お、さっすが! あれ、俺めちゃくちゃ見たくて! だけど、一時間やっても手に入らなかったんだよ……」
悲しそうにうなだれるトオルくん。そんな細かなリアクションも可愛い。思い浮かべてるだけで幸せだし、手を振ってくれるだけで生きがいになる。
でも、トオルくんのこのあとの人生で、トオルくんが誰かと付き合うかもしれない。
そいつはトオルくんと笑って、手をつないで、デートして、結婚して……?
やだやだやだやだやだやだやだ。
そこには、私がいるべきなんだ。
私はトオルくんの全てを理解してるし、泊まったこともある、一緒に遊んだこともある。
……これじゃ、だめなんだ。
それだけじゃぜんっぜん足りない。
校舎の中に入って、私が歩いていないことに気づいて「ん?」とこちらを振り返ってくれるトオルくん。
呼んでくれるトオルくん。かっこいいトオルくん。
私は笑った。
そして、急いでトオルくんのところへ向かう。
「立ち止まってどうしたんだよ」
「ごめん、考え事してた」
はぐらかす。不思議そうな顔をするトオルくん。私は決めた。
トオルくんと絶対に両想いになる。
両想いになって、その状態で告白する。それで、トオルくんに誰も近寄れないようにするんだ。
私の考えていることが分からず、まあいっかとつぶやいて笑うトオルくん。その表情は今日も相変わらずかっこよかった。
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