十二の悪役

くろまめ

第1話

 僕は恵まれていると思う。家族仲もよく、勉強も運動もできるほうだ。そんな僕を家族は可愛がってくれる。行きたいところに連れていってくれる両親、勉強・スポーツ・人間関係全てを見ても完璧な兄。

けど、僕はそんな兄が大嫌いだ。

どんな問題も話し合いで解決した方がいいと言ういい子の兄と、時には武力行使も必要だと考える僕。

一度、兄と意見が割れたことがあるが、ほとんどのみんなは兄が正しいと決めつける。

(そんなんだから、ほんとに助けて欲しいと思っている人を助けることが遅くなるんだ…)

『話し合えば解決することが絶対できる!』

『…でも…』

『そうよ、お兄ちゃんの言う通りよ』

母がそう言って僕を困った子供を見るような目で見た。その時僕は気づいた、人を傷つけて解決するようなことは胸に留めておかないといけないと。

『…うん!お兄ちゃんの言う通りだね』

僕がそう言うと2人はほっとしたような顔をしていた。

それからだ。兄を嫌いになったのは。


「蓮ちゃん?お兄ちゃんが警察官になったお祝いをしに、食べに行くわよ」

母が嬉しそうに部屋をノックした。

「うん、今行くよ…」

(警察…やっぱり兄はぬるい…)

「…悪いことしたやつはすぐに反省するわけないのに…」

僕は机の中から黒いキツネの目元だけ隠れる仮面を取り出す。

「お前が見える悪人を裁くなら僕は見えない悪人を、裁いてやる」

(そのために僕は…)

机の中から手紙を一つ取り出す。

【二代目七刻様へゴーストへの勧誘】

僕はその手紙をポケットに突っ込んだ。


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