転生領主の優良開拓〜前世の記憶を生かしてホワイトに努めたら、有能な人材が集まりすぎました〜
空野進
第1章 ホワイトな求人
第1話 ホワイトな求人
せっかく転生してブラック企業から解放されたと思ったのにどうしてこうなったんだ……。
目の前には既に住人たちは逃げ去ってしまった後の広大な敷地。
唯一ここに住んでいるのは領主の俺、ライル・アーレンツ。
つい最近までは両親と一緒に住んでいたのだが、彼らは領地を襲ってきた魔物の襲撃で帰らぬ人になってしまった。
そして、俺が家督を引き継いだ所までは良かったのだが、人間族を滅ぼそうとしている魔族の領地やかなりの権力を持っている有力貴族、挙げ句の果てには未開の大森林に挟まれた領地だ。
今までは俺の両親がなんとかそれらを食い止めていたから領民も残ってくれていたのだが、俺がその領を引き継いだとわかってからは領民達はこの領地から逃げ出してしまった。
こんな場所で俺一人、一体何ができるんだ?
これなら俺も逃げ出したいのだが、領主という立場はこの上なく面倒だった。
国王からその領地を任されている……という身分である以上、そんな俺が逃げ出したとなれば国家への反逆として見つかったら処刑されかねない。
俺はただ平和に暮らしたいだけなのに……。
何もせずこのままいても魔物たちに殺される。この場から逃げても殺される。
せっかくブラック企業から解放されたのに、これじゃあ似たような状況じゃないか!
生き残るためには……、やはりいち早くこの領地を襲われても平気なくらいの戦力を集めないといけない。
それに生きていくためには食料も作らないといけない。
やることが山積みだ……。とにかくまずは人を集めないことには話にならない。しかも早急にだ。
でもどうやって人を集める?
ただでさえ辺境で、こんな危険な領地に来てくれる人なんているのだろうか?
いや、普通なら来てくれないならとことん条件をよくすれば何人か……。
それなりに人数さえいれば危険に対する対策もできる。
そのためには――。
「やっぱりホワイトか……」
この世界の労働環境がどういったものかはわからないが、少なくとも転生前の日本でホワイト企業と呼ばれていたところを元にすれば人を集められるんじゃないだろうか?
少なくとも俺はそんなところで働きたい。
「よし、そうと決まったら早速募集をかけるしかないな」
時間をかけていては俺自身が魔物に襲われてしまう。
とりあえず俺は近くを通った行商人に王都で求人を出してもらうように頼んでおいた。
◇■◇■◇■
「おい、あの求人票、見たか!?」
「あぁ、勿論だ。でも眉唾物じゃないのか? 今雇った者には安定した給料を渡した上で働かなくてもいい日まであるそうじゃないか」
ライルが貼り出した求人票は王都で早速話題になっていた。
というのも、この世界では常に働いているのが当たり前。休みなんてもっての外。能力のない者が搾取されていくのは当然……といったブラック企業も顔負けの労働環境が蔓延っていた。
そんな中、突然現れた最高の労働環境。
疑ってかかるのも無理はなかった。
だからこそ、すぐに行動に移す者は少なかった。
それでも数人はすぐに動き出す。
その中の一人がエレン・ロウランス。
Sランク冒険者で豪剣のエレンと呼ばれている女性だった。
背丈が高く赤い長髪、背には巨大な大剣を背負い、大事なところを守る鎧を身につけているが、それでもそのスタイルの良さは隠し切れていない。
しかも顔立ちもいい、美女といえるような女性なので、町を歩いていると度々振り向かれる女性だ。
しかし、相手がエレンだと分かると皆ため息を吐いて視線を外していた。黙っていたら美人なのだが、その性格があまりに豪快すぎることが原因だった。
そんな彼女が求人票を見てニヤついていた。
「そうか、細かい規約はなくて、所定の時間だけ働いていたらあとは何も言われないのか……。ふふふっ、そうか……」
ニヤつきながら笑うエレンに周りにいた人は引いてすらいた。
しかし、エレンはそんなこと気にした様子はなく、その紙を握りしめていた。
彼女が働いている冒険者ギルドは自由を売りとしていて、仕事も自分で依頼を受けてそれの達成によって報酬が支払われるという形だ。
確かに低ランクのうちは好きな時に好きなことをすればよかった。
しかし、高ランクになるにつれてどんどん規約がうるさくなっていった。
特にSランクは皆の模範となるべきだと普段の生活から色々な規約をつけられた。
こんな堅苦しい生活にエレンはうんざりとしていたのだが、金払いがいいのも確か。
生活をしていくためには仕方ないと割り切っていたのだが、今回の求人票を見て気持ちが変わった。
こんな堅苦しい生活を続けるくらいなら新しいところで生活をしよう。
「こうしてはいられないな。すぐに行かないと! これだけいい条件なんだからすぐに人が集まって打ち切られるだろうからな」
こうと決めた後のエレンの行動は早かった。
すぐにギルドへ出向き、ギルドを辞める手続きをする。
当然必死に止められるがそれを振り払い、そのままの足でアーレンツ領へと向かっていく。
「いや、この求人は争奪戦になるだろうからな。手ぶらで行くより何か持っていった方がいいか?」
エレンは辺境の地へ向かう途中、少しだけ悩み出す。
色々と手放した以上、確実に雇ってもらいたい。
そのためにも自分が有能であることをしっかり伝えないといけない。
そこでこの近くに未開の大森林があることを思い出す。
「よし、そこでドラゴンの一匹でも狩っていって手土産にすればアピールになるだろう」
エレンはまるで散歩に行くかのような足取りでライルの悩みの一つである未開の大森林へと出向き、簡単にドラゴンを仕留めていた。
「絶対にこの求人、逃すわけにはいかないからな!」
目を光らせるエレンはドラゴンを引きずりながらアーレンツ領へと向かっていった。
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