ンゲンニノダタ

ンゲンニノダタ

人間とは、何を極めても、ただの人間である。

　文武両道を極めても、ただの人間。

　才色兼備を極めても、ただの人間。

人間とは、何を果たしても、ただの人間である。

　勧善懲悪を果たしても、ただの人間。

　破鏡重円を果たしても、ただの人間。

人間とは、何に至っても、ただの人間である。

　悪逆非道に至っても、ただの人間。

　聖人君子に至っても、ただの人間。

人間とは、成長しても、ただの人間である。

　高材疾足に成長しても、ただの人間。

　八面六臂に成長しても、ただの人間。

人間とは、理解しても、ただの人間である。

　森羅万象を理解しても、ただの人間。

　天地開闢を理解しても、ただの人間。

　知識を蓄え、力を備え、地位も名誉も浴びたとて、人間は人間であり、万能の神にはなれない。比喩に神と呼んだとて、所詮は比喩であり、事実にはならない。

　禍福を齎すのは神ではなく、人間。

　神頼みをしたとて、この世を動かすのは人間。

　水もワインにはならない。

　石もパンにはならない。

　故に人間も、神にはなれない。

　徳を積んでも、悪行を積んでも、人間である。

　千年費やせど、至った先はただの人間である。

　ただの人間達よ、理解せよ。

　他人とは、貴様と同じ、ただの人間なのだ。