第28話 ダイニングルーム(6)
「ところであなたたち、勝則の日記を読んだって言ってたけど」と真知子。「その日記はどうしたの?」
「しかるべき場所に保管してあるわ」と伽耶。
「何のことだ?」と達也。
「この子たち、勝則の日記を読んであの子が盗撮犯の犯人じゃないことを確認したそうなのよ」と真知子。
「本当か?」と達也。
「今、その話をしたくないわ」と麻衣。
「なぜ?」と真知子。「あなたたちのことが悪く書いてあったからなの?」
「それもあるわ」と麻衣。「だけどそれだけじゃない。」
「なぜそれをすぐに見せなかったんだ。そうすればあんな騒ぎにならなかったはずだ」と達也。
「プライバシーを守るためよ」と麻衣。
「あんな騒ぎを起こしておいて、プライバシーなんて言ってられないだろう」と達也。
「勝則は冤罪だったのよ」と麻衣。「勝則が犯人じゃないって私たちが分かればそれで十分だったわ。」
「何を勝手なことを言ってるんだ」と達也。「世間を騒がせたじゃないか。」
「勝則のせいじゃないわ」と麻衣。
「だが潔白を晴らせるじゃないか」と達也。「プライバシーなんて言ってられないだろう。」
「個人的な日記じゃ疑いを晴らせないわ」と麻衣。「あとから作ったものと思われるだけよ。」
「それは読んでみればわかることだ」と達也。「その日記を持ってきて見せなさい。」
「断るわ」と麻衣。
「なぜだ!」と達也。
「そんなことをすれば私たちの信用がなくなる」と麻衣。「勝則に合わせる顔がないわ。」
「やましいことがないなら見せてもいいだろう?」と達也。
「また日を改めて話すわ」と麻衣は殊更につっけんどんに言った。
「家族に隠し立てなんておかしいじゃないか」と達也。
「父さん、しつこいわよ」と伽耶が顔をしかめた。
「だまりなさい!」と達也が叫んでテーブルをドンとたたいた。「下手に出ていればいい気になって、何がプライバシーだ!親を馬鹿にするのもいい加減にしなさい!」
麻衣と伽耶は椅子から立ち上がった。
「待ちなさい!」と真知子。「親にも言えないプライバシーの話って何なの?教えてちょうだい!」
部屋を出ていきかけた麻衣は振り返った。「父さんと母さんの浮気の話よ。それから離婚調停とか、私たちの異母兄弟とかもろもろの。」
真知子が血相を変えて立ち上がり、麻衣に駆け寄り両肩をつかんだ。
「どういうことなの?」と真知子。「説明して!」
「言った通りのことよ」と麻衣。
「そんな話はでたらめだ」と達也。「二人とも座りなさい。」
「いやよ」と麻衣。「もう話したくないわ。」
「怒鳴ったことは謝る」と達也。「ちゃんと説明するから座りなさい。」
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