水無月の君へ

機乃遙

Overture

0-1

     †


 これから「水無月の君へ」って詩の曲をやるんですけど、

 これは六月の三十一日に囚われ続ける、あんたたちのための歌です。


     †



 六月、土砂降りのファミレスで。

 わたしは冷えたコーヒーを舐めていた。さっきからコーヒーサーバーがお湯切れで、一杯の茶も出せなくなっているからだ。だから二十分ほど前に淹れたコーヒーを、猫が水を舐めるみたいに飲んでいた。

 その一方で、わたしの前にいるのはジャージ姿の少女。彼女は、そんな怠惰な暇つぶしをなんとも思わず、フライドポテトを肴にカルピスソーダをやりながら、キャンパスノートによく分からない文字列を書き殴っていた。アディダスのジャージにプリーツスカート、傍から見ればファミレスで宿題をする女子高生だが、彼女がやっているのは数学でも英語でもなく。しかし、もっと難解な問題だった。

「ジューンヴナイル」

 彼女――サリーは、長い茶髪を掻き、大きめの伊達メガネを直しながら呟いた。

「水無月は、ジュンでジュヴナイルだから。だからジューンヴナイル、どう? イケてない?」

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