目立たない毎日を過ごしていたのに‥

つつ

第1話

「しゅうと」

「…」

「おかえりなさい」

「どうした?元気ないな。何かあったのか?」

「いや、」

言葉の続きを遮られてしまった。しかも、悪意もなく、「早く、テレビで、しゅうとをみたい」だなんて言われてしまった。悪気もなく、笑顔で。


…なにも返せなかった


報われる時なんてあるのか。期待したのが馬鹿馬鹿しく感じてしまう。


ベタな展開と言うのはあり得るだろうか。


そんな事を、頭の中でぐるぐると渦巻いていた。


「そうだな…まだ、先になりそうだが、応援してくれて有難い」


「うん!待ってるよ」


あいつは、この事を知っている。俳優だからこそ、売れないからこそ、受け入れている。


そんな事を考えながら、あいつがどこかに消えるまで呆然と立ち尽くしていた。

あいつと、別れてから、オーディションの合否を聞きに、身支度を整えて外に出た。


-数時間後


(また、オーディション落ちてしまった…)

何回目か、忘れてしまった。最初の悔しさなんてなくなっているのかも知れない


「どうした?しゅーと」

声がする方に向くと、高校からの友人のかずがいた。

嬉しかったが、今は会いたくない。嫌な所をぶつけてしまいそうになるから。


「てか、ここの会社、有名なんだよな!」

「もしや、オーディションだったり…?」


「…そうなんだよ。合否を聞きにきていてさ」


「それなら、言ってくれよなー」


「今から話を出来ないよな」


「うん、ごめんな」

モヤモヤしかなかった。友達なのに、困った顔を浮かべてるのをみると辛い。

冗談を言える気分ではない。昔の話をしようとする雰囲気が漂ってきた。


「…今から用事があるから、じゃあな」

「おう、また、しゅうとと会えるのかな?」

「あ、ああ、いいぞ、今日以外でな」

「ああ」

かずと、離れた。嘘をついてしまった罪悪感だけが、心の中に、残ってこびりついてしまった。


かずSide


しゅうとが、何か悩んでるのは分かっていた。

今回ので、少し理解できたかも知れない


「…今から用事があるから、じゃあな」


「おう、また、しゅうとと会えるのかな?」


「あ、ああ、いいぞ、今日以外でな」


笑顔を浮かべていたが、俺の中では無理をしてるように見えた


(友達として、力に、なれないなんて…失格だな俺は)

もし、良かったら、相談ぐらいなら聞くから

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