第7話
「正直ね、まぁ持って生まれたものだし仕方ないっていうか…もうそこまで気に病んではないの。思春期の頃は嫌だったし悩んだけど、タカくんと恋して結婚して、もう一花咲かせようってことも無いし。周りの評価なんて関係無いし」
「そだね…」
「自分の顔はそこそこ気に入ってるしお化粧するのも本当は好き、楽しいから…でもたまに、今日みたいに…上手にメイク出来たなって思ったのにそうでもない現実叩きつけられちゃうと…ガーンってなるのね、悲しいっていうか虚しい。自分の目は嫌いじゃないけど、私自身が『二重が可愛い』って価値観持っちゃってるから厄介なのよね」
「うーん」
「アジアンビューティーとか要らない。西洋のお人形みたいなまん丸のお目々が良かった」
「うんうん」
妻はその後もぐたぐだと美意識について話してくれて、俺はほとんどのエピソードは既知だがまるで初耳のように「ほぉ」「へぇ」と相槌を打った。
こんなことは初めてではないし、その度に俺は励まし慰めている。
しかし俺も心ある人間なので生理前だからとイライラをぶつけられても困るし、反撃するくらいの権利は持っている。
「いつもごめんなさい」
「良いって…死ぬまで言い続けるんでしょ。目が変わったところで満足できるとも限らないし」
「確かに…タカくんは、コンプレックス無いの?」
「俺?俺は…もうちょっとしたら髪とか気になるんじゃない?親父はハゲてるし」
「そっか…そっちの方が大変そう…ぷふっ」
「あ?」
苦笑する妻の口元が存外に可愛かったので、くすぐりの刑に処した後にもう一度抱いた。
全て吐き出した彼女は晴れやかで軽やかで、顔の作りなんて関係無く色っぽくて美しかった。
それからも、ことあるごとに妻は「目が」「目が」と俺に愚痴をこぼしては呑み込んで生きている。
俺の機嫌によっては「整形しちまえ」なんて言うこともあるが、本人はただ発散したいだけらしいので本気で捉えた俺が悪者みたいになって終わる。
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