私の幼馴染は私にだけ不愛想で無表情

あきろん

第1話 私が上で、雅が下


「ねぇ、足、揉んでよ」

「自分でやって」


 幼馴染のお願いをこうもあっさり突っぱねるのは感心しない。

 私がこんなにも足を痛めて、苦しそうにしているのにだ。


 そもそもここは私の部屋だ。レンタル料を取ったっていいくらい。

 特に何もすることなく、スマホをいじるだけ。

 私は少なくとも3.4週してるであろう漫画を読んでいるのだ。


 ただ座ってスマホをいじるだけの奴。

 自分のベッドに寝転んでは、何度も読んだ漫画を流し見して、足が痛い私。


 どちらが多忙で優位なのかは明白でしょうに。



「みーやーびー揉んでよー」

「……」

「みゃーびー」


 今のはちょっと可愛すぎたか?

 こんな不愛想で滅多に表情を変えない奴には、もったいない呼び方だったか。

 というより何故、みやびは立場も物理的にも上にいる私を無視するんだ?


 見飽きた漫画の描写から目を離し、少しだけ視界に雅を捉える。

 漫画よりも見飽きたその後ろ姿は、私と違ってサラサラで綺麗な黒髪。

 何度羨ましいと思ったか。

 その髪を見る度に私は、自分の痛んだ薄茶色の髪を指で摘まんでは、いじる。


 物静かで、大声なんて幼稚園以来聞いてないんじゃないだろうか。

 私はいつも騒がしいやら、動きがうるさいだとか、1分でもいいから黙ってろなんてお母さんによく言われる。


 なんで一緒に育ってきた雅とは、こんなにも正反対なのだろう。



みやびって大人びてるよねー、まだ15歳の高1なのに」

かなでが子供すぎるんじゃない?」


 そうなのか?15歳なら私が普通、50点、ノーマル、及第点って位置に立ってる気がする。

 私の物差しで測るとするならばみやびは、60?いや88点くらいあるはずだ。流石優等生雅みやびちゃん。


 そんな優等生で大人なみやびに私は簡単な質問をした。はい、いいえ、で答えられる。


みやびって処女?」


「…………な、何、言ってんの?」


 別に私がすごく気になってるとかでもなく、ただふと思いついた質問がそれだったってだけ。

 深い意味は全くない。数分後の未来も考えていない。


 みやびは目を大きく開いて、顔を赤らめながら振り返るその顔は、滅多に見ない表情だった。

 常に無表情で不愛想な雅は、私にだけ見せる表情が少ない。

 機嫌の悪い顔と呆れた顔。

 この3パターンしかない。


 だからこの表情はレア。スーパーレアだ。



「だぁかぁらぁ~。大人な雅さんはぁ――」

「してない!」

「あれー?何をするかは、ご存じなんですね?それもそうかっ優等生だもんね?」


 私は調子に乗ってしまった。

 、なんて言葉は私には必要ないかもしれない。言い換えるとすれば……


 私は調子に乗ってしまった。


 スーパーレアな表情は一瞬で無くなってしまった。

 今私の前には3パターンの1つ。機嫌の悪い顔をしたみやび

 まぁレアなのだから仕方がない。ぽんぽん出てしまったらレアではなくなっちゃうからね。



「あはー、ごめんみやび。私が悪かったから、それは止めよう?」


 雅は無言で私にエアコンのリモコンを投げつけた。



「いだー!!」



 私の部屋には、私の叫び声が響き渡った。


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