偽りの国のアリス

臥龍岡四月朔日

第1話 偽りの街のアリス

 ネオン煌めく楽園都市。私、『アリス』は人通りの多い繁華街のメインストリートを歩く。小柄なボディに纏った露出度の高い水着のような服装は大きな胸とお尻を強調し、街行く男達が私に注目する。


「お姉さん、イケてる格好だね。俺と一緒にどう?」


 背後から声がかかる。振り返ると、いかにもプレイボーイ風の男が立っていた。


「お兄さんの格好もイケてるね」


 この街では誰しも美男美女ばかり。容姿を褒める場合、衣装を褒めるのがセオリーだ。


「良いよ、相手したげる」


「話しが早くていいね!」


 私はその男と近くのホテルへと向かった。


 部屋に入ると早速私は服を脱ぐ。衣服という拘束具を解かれ、大きな胸が重力のままにこぼれ落ちる。


「良いねその胸、チョー俺好みだよ」


「最近流行りの長乳ってやつにしてみたんだ」


 私はそう言いつつ胸を強調するポーズでアピールした。


「最高だね。なんだっけ?小柄な体型にグラマーなボディ、トランジスタグラマーっていうんだっけ?」


「お兄さん古いよ。最近はショートスタックって言うらしいよ」


「へー、寸詰まりショートスタックっていうのか」


 ショートスタックと言うのは小柄だがしっかりと凹凸のある大人の身体であることをさすスラングだ。


「こっちはどう?」


 そう言って私は下半身を隠していた布切れを外す。

 無毛でピッチリと閉じた、まるで未通娘おぼこのようなソコが露わになる。


「大人っぽい方が好みかな?」


「いいや、最高にクールだね」


「もしかしてお兄さんってそういう趣味?」


「いいや?だって君は十分に大人だろ?」


「ええ」


 その言葉の通り、未通娘のようなその部分は見た目に反し難なく男の物を受け入れる。


 こんなやり取りをして私はそのナンパ男と一夜を共にした。


 男受けのする低身長、豊かな胸、大きめのヒップ、無垢な少女のようなその部分。これらは全てアバターだ。

 そう、ここはバーチャル世界。現実と切り離された欲望の世界だった。


 これは近未来、VRの世界が現実とほぼ変わらなくなった世界の物語。

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