第二章 アップルの森編 第三話 最初の試練

第三話: 森の奥へ

アップルの森の浅い部分でリンゴを記録した後、エルン、バルボ、サラの三人はさらに奥へと進んだ。


森の奥へ続く道は徐々に狭くなり、木々が密集して日差しが遮られ、薄暗くなっていった。


足元には苔が広がり、見たことのない植物が散見される。


「さっきまでとは全然違うな……。」バルボが少し緊張した様子で言った。


サラも周囲を見渡しながら、「うん、ここからが本当の冒険ね。」と答え、歩を進めた。


しばらく進むと、突然周囲がひんやりと冷たく感じられ、森全体が静まり返ったような不思議な感覚が漂い始めた。


「なんだか嫌な予感がする……。」バルボが慎重に言った。


エルンも同じように感じ、三人は足を止めた。


その時、木々の間から現れたのは、「モクモクフクロウ」という鳥のモンスターだった。


全身が灰色の霧で覆われ、赤い目が彼らをじっと見つめていた。


エルンは驚きながらも反射的に手帳を開こうとしたが、父の手帳がないことを思い出し、急に不安に襲われた。


あの手帳には確かに「モクモクフクロウ」についての情報が記載されていたはずだ……。


エルンは必死にその情報を思い出そうとした。


あの晩、エルンは手帳をもらってから、何度もその内容を読み返していたため、モクモクフクロウに関する詳細を思い出すことができた。


「確か、モクモクフクロウは霧を操る能力があるって書かれていた……そして、その霧には眠りを誘う力があるとも…」エルンは父の手帳に書かれていた内容を思い出し、焦りを感じた。


「このままじゃ眠らされてしまう……早くどうにかしないと!」


モクモクフクロウはゆっくりと近づき、霧を周囲に漂わせ始めた。


視界がどんどん悪くなり、三人は混乱し始めた。


バルボが叫んだ。「どうするんだ!?霧が濃くなってきてる!」


エルンは一瞬立ち止まり、深呼吸をして冷静になろうとした。「そうだ、焦るな……。確か、モクモクフクロウの目を直接見ないようにすれば霧の効果を防げるんだ。目を隠すんだ!」


「目を隠せばいいのか?」バルボが不思議そうに聞いた。


「そう!その赤い目を見ると、霧に影響されやすくなるんだ!」エルンは自信を持って答えた。


サラがすぐに自分のスカーフを取り出し、「これで目を覆ってみて!」と言い、三人はそれぞれ目を覆った。


すると、不思議なことに、霧の眠気を誘う力が弱まり、彼らは意識をしっかり保つことができた。


「これでなんとか耐えられるね!」エルンが叫んだ。


モクモクフクロウは彼らの行動に気づき、霧をさらに濃くしようとしたが、三人はその場を静かに動かず、しっかりと守りを固めていた。


エルンは手帳に新たな情報を記録するため、落ち着いた声で言った。「モクモクフクロウは、自分の姿を相手に見せなければ霧の力が弱まる……これを覚えておこう。」


モクモクフクロウは彼らが霧に惑わされないことを理解すると、不意に静かに飛び去って行った。


霧が徐々に薄れ、森の静けさが戻った。


「ふう、助かったな……。」バルボが大きく息を吐いた。


「みんなが冷静に対処したからね。」サラが微笑みながら言った。


エルンは手帳にモクモクフクロウの情報を詳細に記載し、三人は再び次なる冒険に向けて歩き出した。


「モクモクフクロウについてわかったのはこれだけか……。もっと詳しい情報が欲しいな。もしまた出会えたら、その時は襲ってこないといいんだけど。」



**モクモクフクロウ (Mokumoku Owl) — エルンの手帳より**


- **大きさ**: 大体50cmくらいで、羽を広げるとさらに大きく見える!


- **色**: 羽は灰色と緑が混ざったような色で、光の加減で変わって見える。不思議な色合いだ。


- **目**: 真っ赤な目が特徴的で、特に霧の中ではその目が怖いくらいに光って見える。霧がある時にその赤い目を見ていると眠くなっちゃうんだって。だから霧が出たら目を瞑るか隠さないと。


- **特徴**: 霧を発生させるフクロウ。父の手帳には「危険を感じると逃げる」と書いてあったけど、今回は僕たちに向かってきた。どうやら、モクモクフクロウの暮らしているエリアに僕たちが入り込んでしまったからかもしれない。


- **住んでる場所**: 森の奥に住んでいるけど、浅い部分でもたまに姿を現す。エサを探しているのかな?


- **性格**: 普段は臆病で、こちらから手出しをしなければ逃げるみたい。でも、今回みたいに自分の場所に入られると攻撃的になることがわかった。気をつけないと危ないね。


- **言い伝え**: 村では、このフクロウに会うと幸運が訪れると言われているけど、今回は威嚇されてしまった。ちゃんと距離をとっていれば、また違った行動を見せてくれたかもしれない。


- **僕の思ったこと**: 父の手帳には「逃げる」と書いてあったけど、状況によっては襲ってくるんだね。今度はもっと注意して観察したいな。また出会えたら、仲良くなれるかもしれない。



[改正版]


**朦朦梟 もうもうきょう (Mokumoku Owl)**


- **学名**: *Aether Strigiformes*


- **大きさ**: 全長約50cm、翼を広げると最大で80cmに達する。


- **外観**: 灰色と緑が混ざり合った羽毛を持ち、光の加減や周囲の環境によってその色合いが変わる。特に霧の中では非常に視認しにくく、森の自然に溶け込む。


- **目**: 真紅の目が非常に印象的で、霧が発生している際に朦朦梟の目を見つめてしまうと、強い催眠効果があり、意識が遠のいてしまう。


- **特徴**: 朦朦梟は、危険を察知すると濃い霧を発生させる。この霧は視界を遮り、朦朦梟が身を隠すために使われるが、霧の中でその赤い目を見てしまうと催眠にかかり眠りに陥ることがある。このため、森の霧が濃いときには特に注意が必要。


- **生息地**: 主に森の奥深くに住んでいるが、時折浅い部分に現れ、エサを探していることがある。特に霧が出やすい湿った場所を好む。


- **生態**: 朦朦梟は夜行性で、霧を活用して自分を保護しながら小動物や昆虫を捕食する。昼間は木々の高所に潜み、夜になると行動を開始する。


- **性格**: 通常は臆病で、危険を感じると霧を発生させて逃げることが多い。ただし、テリトリーに侵入されると非常に攻撃的になる。


- **言い伝え**: 村では、朦朦梟を目撃することは幸運の象徴とされている。しかし、遭遇した際にその縄張りに入ってしまうと、激しく威嚇されることもあるため、注意が必要。


- **備考**: 朦朦梟は非常に貴重な存在であり、霧の発生能力やその神秘的な存在感から、冒険者の間で特に興味を持たれているが、無闇に近づくことは推奨されない。また、再び遭遇する際には、適切な距離を保つことが重要である。

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