エルンの大冒険

@Dango23

プロローグ 夜の決意

静かな夜、エルンは家の外に立ち、暗闇の中で自分の家をじっと見つめていた。


星々が輝く空の下、彼の心は揺れていた。


明日、12の歳の子たちは自分の運命を決める日。


そしてエルンは、冒険に出ることを決めていた。


しかし、家を出て広い世界へ飛び込むことは、期待と同時に少しの不安も伴っていた。


「明日、僕は旅に出るんだ。」自分自身にそう言い聞かせるように、エルンは小さくつぶやいた。


その時、家のドアがゆっくりと開いた。


車椅子に座った父が、夜風に吹かれながら静かに外へ出てきた。


父はエルンに気づき、微笑みながら手に持っていた古びた手帳を差し出した。


「エルン、これを受け取ってくれ。」
父の声は静かだが、その中に何か特別な意味が込められているのがわかった。


エルンは手帳を受け取りながら、父が何を言おうとしているのかを考えた。


これまで、父から世界の様々な話を聞いてきた。


遠い国の風景や、奇妙なモンスター、そして珍しい植物の話。


しかし、父が実際に冒険をしたという話は一度も聞いたことがなかった。


「この手帳……どうして僕に?」エルンは問いかけた。


父は少しの間沈黙し、遠くを見つめてから静かに言った。


「昔、僕もお前と同じように冒険に出たんだ。でも、途中で怪我をしてしまって、それ以来、こうして車椅子で生活している。僕の冒険は、そこで終わってしまった。」


エルンは驚いた。父がそんな過去を持っていたことを全く知らなかった。


「それでも、僕は後悔していない。たくさんのものを見て、感じて、学んだからね。でも、この手帳はまだ完成していないんだ。エルン、お前には自分の道を見つけてほしい。

もちろん無理にとは言わない。お前はお前のやりたいことをやり、悔いない人生を送って欲しい。それが僕の今の夢だ。」


エルンは父の言葉を聞きながら、手帳の重みを感じた。


それは、単なる紙の束ではなく、父が見た世界の断片、そしてまだ見ぬ世界への入り口だった。


「父さん、僕は決めたよ。僕も冒険に出る。手帳を完成させて、僕の目で世界を見てみたいんだ。」


父はゆっくりとうなずいた。「そうか。エルン、お前ならできるよ。」


夜空には無数の星が輝き、エルンの決意を照らし出していた。


こうして、彼の冒険の第一歩が始まろうとしていた。

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