第25話
「ほら"ー、きてー···」
黒く汚れた手が、私の前に差し出されます。言葉もなんとか日本語だし、私に向ける毛だらけの顔は、よく見れば半年間手入れを怠ったチャウチャウのようにも思えます。そういえば、濡れた犬の臭いもしますし。
私は未知との遭遇を受け入れる決意を固め、彼の手を取ろうとしました。
でも、それは1人の男性によってはばかられることに────
「駄目だ。」
深みのある声を周りに響かせて、私の手首を掴んだのは、頬と白いシャツに血を付けて、グレーの髪をうねらせた背の高い男の人。
さっき、学校で"藍"と皆さんに呼ばれていた方です。
「あ、···藍、さん?」
私が彼の顔をじっと見つめると、藍さんはすぐに目を反らしてしまいました。
「あ"ー···」
謎の生物が謎の言葉を発した瞬間、藍さんは拳を一振りふわりとかざすと、謎の生物がお店の壁に勢いよく打ち付けられました。
「へぶしッ」
「え?そ、そんな、いきなり殴ってしまって、大丈夫なのですか?!」
私はびっくりして、慌てて謎の生物に近づき、手を差し伸べようとしましたが、
藍さんにその手を取られました。
「ダメ。」
「···あ、あの、」
「···っ」
手をぎゅっと握られた瞬間、藍さんが自分の口に手を当て顔を思い切り反らしてしまい、私はどうしていいかわからず、立ちすくみます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます