第21話

黒ずみだらけの校舎、上靴のかかとを踏みながら歩いている男性。


 ズボンはやたら腰あたりまで下がっていて、あれでは何のためのズボンだかわかりません。 



 周りの生徒にじろじろと見られながら、校門に掲げられる学校名を見れば、『宝泉ほうせん高等学校』と書かれています。



 さっきいたサラサラな黒髪さんが"だんしこう"だと言っていた意味もよくわかりました。



 女生徒の姿が見当たらないのです。



 こんな、男子しかいない学校が存在することすら知りませんでした。



 空からは雨が降ってきていて、とりあえず私は自分の家に帰ろうと左右を見渡すも、さらに見慣れない風景が目に入ってきます。



 地割れしたようなアスファルトの地面、所々剥げの目立つ塀、電信柱。横断歩道の白い線もあるのかないのかわからないほど薄くなっています。



 私の知っている、綺麗な世界はどこにいってしまったのでしょう。




「おねーさん、うちの学校の前で何してんの?」

「1人?ってボロボロだね??どこの学校なの?」



 3人組の男性が私に話し掛けてきました。



 3人の顔を見てみれば、肌色のワントーンで塗られた凹凸のない肌ではなく、シミや吹き出物のような歪な肌をしています。



 も、もしかして、私もそんな肌になってしまっているのでしょうか。思わず自分の肌を触り確かめます。



「ねえ送ってってあげるよ。」

「名前なんてゆーの?うわ、すっごい綺麗な肌してんね~。」



 ああ、良かった。私の肌は死んではいないようです。

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