四 配達

 十月十七日、日曜日、午前。

 晴天のこの日、正俊は堀田運送とおなじ地区にある原田伸子の自宅にいた。

「ソファーセットと聞いてたから、梱包するのかと思ってました。もうしてあるんですね。助かりますよ」

 正俊はトラックから荷物を移動させる機材を降ろした。

「正俊さんひとりでだいじょうぶなの?」

 原田伸子はトラックのそばに居て、これだけの荷物を、正俊ひとりで積み込めるのか心配になった。


 正俊は原田家の居間側の廊下から、移動リフトでソファーと家具を大きな車輪のキャスターに乗せてトラックへ運び、トラックのリフトを使ってそれらをトラックに積んだ。

 痩せて見える正俊も、作業用のつなぎの上半身を脱いで腰に絡げ、Tシャツになった姿は、ツナギを着ている時に想像したよりはるかに筋肉質の体型で痩せては見えなかった。


 荷台に積んだソファーセットと家具を傷つけないよう、正俊はそれらをさらに保護材と保護用シートで包み、手際よく固定ベルトを使って厳重に荷台に固定し、

「大山路の森田園でしたね」

 原田伸子にほほえんでいる。

 目的地は旧市街中央の北西部の大山路だ。山裾の丘陵地に果樹園が拡がる一帯で、長野市内を展望する見晴らしの良い地域だ。


「私も行くわ。今日一日、私を手伝ってね」

 原田伸子は正俊に笑顔でそう言った。

「わかりました。父からもそのように言いつかってます」


 父正信が原田伸子からの依頼を受けた後、一昨日になって父が、

「日曜は一日、原田さんの手伝いをしてくれ」

 と言った。父がなぜそう言うのか理解できなかったが、応接セットをトラックに積んで、正俊はやっとその意味がわかったような気がした。

 これらを全てを屋内へ運び、室内に配置するのに、一般の男一人では不可能だ。女の手では力が足りない。たしか、森田園には祖父母と両親と娘がいたはずだ。娘の父と祖父でこれら家具を室内に配置するのは不可能だろう・・・。


「さあ、行きましょう」

 正俊は原田伸子の腕をとって助手席に乗せた。原田伸子のシートベルトをセットし、運転席に乗りこんでシートベルトをしながら、

「今日はいい天気ですね・・・」

 原田伸子にほほえんだ。

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