蘇生薬と崩れゆく世界と君と

@ankomahi

第1話

11年前...俺がまだ小学生だった頃、「蘇生薬」誕生のニュースが世界中を駆け巡った。

当時の人々は死の恐怖から解放されたと歓喜した。

それが後に世界を大混乱に導くとも知らずに。


1

時計が小さく音を鳴らし、カーテンが静かに開く。今日もまた、7時30分にベッドを降り、洗面台に向かい顔を洗い、朝食を取った後、歯を磨く。今どきこんな健康的な生活を送るのは少数派なのだろうが、子供の頃からの慣れなのだから仕方ない。


さて、今日は何をするべきか。


つい2ヶ月ほど前、付き合いの長かった新聞社が経営不振で潰れた。そのため毎朝、新聞を読むはずだった時間を持て余してしまう。

最近はTVのニュースを見るなり、スマホを弄るなりして時間を潰していたが、今日はふと早めに家を出ることにした。


扉を開けるなり耳にセミの大合唱が飛び込んでくる。夏になると毎朝、我先にとメスにアピールするセミも、今日は一層と元気なようで、「俺はここだ!」と言わんばかりに叫んでいる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る