練習問題2 ジョゼ・サラマーゴのつもりで
◆300~700字 区切り描写なし 群衆描写
スポットライトが激しく明滅し光を忌避するはずの吸血鬼を名乗る彼はしかし光を浴びる程に生き生きと目を見開き観客を煽りマイクを高々と掲げると隣のギターが応えるように激しいスクウィールをしそのギターの甲高い鳴き声はすでに正気を飛ばしている衆人環視の歓喜悲鳴と交じり合いそこに競うように重苦しいベースが激しく急なリズムを刻みギターの高い音を喰ってやろうという勢いで押し出てくれば軽やかに流れるようなドラムが流れを攫っていき目がこちらに向いたと思うやその軽やかさは鳴りを潜め投げやりに叩きつつるように突き放すように大きく大きくなっていく打撃音に悪魔のようなひび割れた重苦しい声がかぶさりドラムの音を飼いならすとその声に衆人は喉の痛みの限界など忘れ声をひたすらに上げるがその狂乱を気にも留めずに男は嘘のように甘やかな声でメロディを紡ぎその姿はセラフィムがごとく精錬で潔癖であれほどにけたたましかった四角い箱の中はうっとりとその声にいざなわれ柵へと押し寄せていた者どもは正気を取り戻し後ろへとさがり中ほどで息も絶え絶えになっていた私はやっと空気を肺に入れる事ができ彼の慈悲に感謝をしたが音が全て消えた一瞬光が消え次の瞬間目が眩むほどの光が舞台をつつみギターがベースがドラムがあらん限りの音をあげ彼が再びこの世を割かんがごとくの割れた声をあげ人々は再び波を作り前へ前へと乞うように手を挙げ彼を求め進み私の足は浮き上がりそこで視界は暗転し意識はぷつりと途絶えた
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