ダンジョンになろう

ribon

第1話


ダンジョンで目がさめた。


「異世界転生・・・」


真夏の夜にクーラーをつけずに寝たのがよくなかった。

電気代が高騰してたから節約したかった。

金をためて会社をやめたかった。

自分なりにがんばってきた。でも熱中症で死んだ。


これが現実だ。

かなしい。

いや、かなしくない。

どっちみち現実にはうんざりしていた。

死んでよかったのかもしれない。


「ハハハ!」


わたしは理由もなく笑った。

大人になってからときどきこういうことが起きる。

腐っててもしかたないし、あたりを探索することにした。


5分後、なにも見つからなかった。

ただ石づくりの通路がつづいてるだけだ。


「ステータスとは見れるのかな?」


ステータスは見れなかった。

いろいろやってみたがダメだった。


通路をすすむと広間にでた。

暗くてなにも見えない。


目をこらすと、とおくに光がみえた。

ぎらついている。ネコの目か?


それにしてはでかい。きっとモンスターだ。


「おもしろくなってきたな」


わたしは舌なめずりをした。

モンスターを殺してレベルアップ。

異世界でやることといったらそれしかない。


「やってやる・・・」


わたしは光にちかづいていった。

とちゅう、おちている石くれを拾った。

これであいつの脳天をかち割って二度と光れない体にしてやる。


ためらいはない。

モンスターは邪悪だから殺してもいいのだ。

あのモンスターがいままで出会ってきたクソ上司だったらいいのに。

そうさ。弱者を食い物にするやつらは許せない。

みなごろしだ。


モンスターはとおくを見ている。

わたしはやつのとなりに立つ。

もっている石をふりあげる。


そこで気づいた。

わたしはただのエサだ。

かよわいクズなのだ。

モンスターにかなうわけがない。


やつがふりむく。わたしは光につつまれる。

まっしろに洗浄された。

これからとりかえしのつかない場所へいくのだ。

これでおしまい。

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ダンジョンになろう ribon @ribon_kaku

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