第0話 コミュ障、女神の御前に立つ

「ああなんと、なんと憐れな死にざまか」



「……」



「可哀そうに、ショックで言葉すら出てこないのですね」



「……」



「ですが心配しないで、あなたには新たな祝福を」



「……」



「新しい世界で、せめてあなたの生に少しでも彩を与えたいのです」



「……はい」



「喜んでいただけたようで何よりです。今からあなたを送る世界には魔物がいて、魔法があり、神の加護があり、武器で戦うことが当たり前の世界です」



「はい」



「生を彩るためにまず仲間を募りなさい」



「あっはい」



「そして魔法を学び、神の加護を受け、剣を手に取るのです」



「はい」



「ですが些か、それだけでは心許ないですよね。突然異世界に行けなんて、過酷を強いるもいいところですもの。何か欲しいものはありますか? 大抵のものは叶えられると思います」



「……あ、あの」



「はい、なんでしょうか?」



「ゲームのように、その……」



「ええ、ええ、好きなゲームがあるのですね。そのゲームで使われていたような能力、と言うことでよろしいでしょうか?」



「はい」



「わかりました。それではそのようにしておきます」



「はい」



「では、あなたが歩む踵に福音を――どうか、どうかあなたの生がかけがえのないものになるように、わたくしも祈っております」



「はい」



「その光を超えた先に、あなたの新たな生が待っています。それでは、良い旅を――」

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