21
会計が始まると源ちゃんは小さな声で
「モモちゃん、めっちゃ見られてた」
と頬を膨らませた。
「そうなの?やっぱ恋人に似てるから見ちゃうんじゃない?」
「…あんまりいい気しないね」
「源ちゃんは私の彼氏でもないじゃない、嫉妬しないでよ」
「でも保護者だし」
そんな事をぐだぐだ話していると会計を済ませた松井さんが戻って来て、
「ではこちら、カードとお釣り、レシートと保証書です。お納めください」
と余裕げに笑う。
「はい、ありがとうございます」
紙袋にパズルの様にキッチリ詰められた商品を見ればそれだけで気分が良く、万札を数枚出しての大きな買い物が初めてだったこともあり私は分かりやすくワクワクした。
松井さんがふふと笑う声がしたような気がしたが遮るように源ちゃんが
「モモちゃん、持つよ」
と袋を持って席を立つ。
「源ちゃんありがと、では、ありがとうございました」
「いえいえ、恐れ入ります、ありがとうございました!」
「……」
どうしようかな、悪い人じゃなさそうだし仕事は真面目にしてそうだし、「母をお願いしますね」なんて大人ぶったことを言ってみたくもある。
背後に気配を感じつつ歩くこと数メートル、私は
「……松井、さん、」
とそこにまだ居るであろう母の恋人を呼んだ。
「はい、」
声があったので振り返り
「また、会いましょうね」
と言えば、思いの外自分でもダサいと感じる程に子供っぽい笑い方になって恥ずかしくなる。
「…はい、また!」
最後は会釈してエスカレーターのステップに乗り、するすると1階へ降りたら緊張の糸が解けて安堵のため息を
「よーし…駅に戻ろうか」
「モモちゃん疲れたでしょ、バスかタクシーにしよう」
「そだね……源ちゃんも重そう」
「…」
「…」
その後私達は荷物が重たいのでムラタ店内へコソコソと引き返す。
そして宅配便で自宅まで送ってもらう手続きをして、手ぶらで駅へと戻り荷物を回収して今夜泊まるビジネスホテルへチェックインした。
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