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あの旅行の翌週から夏期講習が始まって、あっという間に夏休みが終わって、秋になって冬が来て。土日は遊んだり勉強を教えあったりと私達は変わらず仲良く過ごしている。
悦っちゃんはあれから私達の仲にすぐ気付いて、温かく見守りつつも「絶対に手を出すんじゃないよ」と源ちゃんに本気のトーンで忠告したらしかった。
「…しないって言ってんのに…今日も言われたよ。信用無いんだな」
もうじきクリスマス、エアコンの効いた部屋でムラタの外観の模型を作りながら源ちゃんがぼやく。
「悦っちゃんもうちのお母さんと連絡取ってるからね、配慮してくれてるんだよ」
「よそのお嬢さんを傷モノになんてする訳無いじゃんか…キスはもう公認だよね?」
「うん…たぶん?」
恒例のちゅっと小鳥が啄むような軽いキス、私の顔が離れれば彼は赤い顔で再び手を動かした。
何でもないこのひとときが私はすごく心穏やかになるから好きで、
「…モモちゃん、好きだよ」
「うん…私も好き、」
なんて甘いやり取りを交わすくらいにはカップルらしくなってきたところである。
さて近況としては、近所には光の速さでバレてしまったし学校生活も普段と変わらなかったけど、親しい友人筋から話が広まれば男子の源ちゃんを見る目が少しだけ変わったらしい。
「なんか『お前、やるな』みたいに声掛けられるんだよ。先生からも。モモちゃんって学校のボスかなんかなの?」とは彼の談である。
そして「アイツがいけるんなら俺でも」と思ったのか、私に関しては男子からの告白が急激に…隔週に1件ペースで増えた。もちろん「彼氏が居るのでごめんなさい」と断るのだが、数人から「アイツと別れたら教えて」と言われたのは胸糞が悪くて仕方ない。
ボサッとしている源ちゃんと私とでは不釣り合いだと思うのか、しかし赤子の頃からの私達の絆を舐めないでもらいたい。まぁ私も彼の魅力を自覚したのは最近だから偉そうには言えないのだが。
ともあれ我々は今日みたいにどちらかの部屋で趣味や勉強をしたり、映画を観たり、バルコニーで流星群を観測したり、オープンキャンパスに行ったり、母と会ったり…家族も交えて若者らしく清い交際に励んでいる。
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