第41話

そして日曜日…この日は3人が待ちに待った水族館に出かける日だ。

まりあには内緒で聖也が予めチケットを買ってくれていたようで、水族館内にはスムーズに入る事が出来た。

中に入るなり翔人のテンションは更に上がり、様々な水槽に釘付けになって見ていた。

一番見たいと言っていた鮫の水槽ではまりあに携帯を借り、何枚も写真を撮った。




「楽しいか?翔人」


「うんっ!あっ、ねぇ見て!ニモ!!」




実物のカクレクマノミを見るのはどうやら初めてのようで、小っちゃくて可愛いとその水槽の前でも夢中に…




「3匹いるから僕とママとおじさんみたいだねっ?」


「そうだなぁ」




この前からやたら3人で…とか、まりあと自分の事を聞いてくる翔人に、聖也はこの子が何を言いたいのかすでにはっきりわかっている。

それもまりあがいない時に限って話してくるため、このように3人でいる時に言われても、彼女は子供の言う可愛い発言としか捉えていないだろう。




「3人一緒に泳いでるから仲良しなのかな?」


「だろうなぁ。今日の俺達みたいだな?」


「うんっ!」




やっぱりそうかとこれで強く確信した。

この子は……翔人は自分に父親を求めている。

こうしてさり気なく伝える事で、こっちから父親になってあげてもいいという言葉を待っているのだ。




「…あのね、おじさん」




まりあに気付かれないようにコソッと聖也の袖を掴む翔人。

何を言いたいのか彼も察しがつく。




「翔人、それは2人の時に話そう」


「…また聞いてくれる?」


「もちろん」




どうかしたのかと言いたそうな表情のまりあに、男同士の秘密だと伝えると、余計わからないというような顔で首を傾げた。

心配しなくても大丈夫だと伝え、そのまま3人で手を繋いで水族館を楽しんだ。

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