第5話

翌朝…




「あっ、真愛ーおはよー」


「あぁ、みのり…おはよ」


「やだっ、真愛ったらなにその顔ー?もしかして寝不足?」


「…わかる?」


「誰が見てもわかるよ。もしかして、昨日は彼氏と泊まりー?まったく真愛ったら…」


「そ、そんなんじゃないよっ…映画見てたら2人で盛り上がってそれで…」




映画なんて真っ赤な嘘。

本当はあれからずっと、私は涼介に抱かれ続けた。

中々ベッドから解放してもらえないどころか、挙句乱暴に振られ続けた腰…

今朝の私は疲労困憊でコンディションも最悪。

もはや彼氏と彼女っていう関係より、ただ都合のいいセフレのような関係だった。




「ふーん、そうなんだ…あっ、そうだ!ねぇ真愛、昨日送った写真だけど、もう見てくれたー?」


「写真?」


「イケメンの養護教諭の話してたじゃん」


「あぁ…そういえばみのり保健室に行くって言ってたっけ?」


「そうだよー。約束通りちゃんと撮ってきたんだから、私の頑張りを無駄にしないでよね?」


「はいはい…」




若干呆れながらも、私はみのりに言われるがまま、鞄から携帯を取り出した。

みのりの言う通り、LINEには彼女から写真が送られてきたという形跡が残されている。

イケメンだって騒がれてる教師なんてたかがしれてると、なんの期待もせずにトーク画面を開くとあらビックリ。




「どう?すっごーいイケメンじゃないっ?」


「た、確かにそうかもね…」




みのりの言う通り、そこには黒髪のイケメン養護教諭が写されていた。

年齢はたぶん20代後半の若い教師…

顔はシュッとしてて、ちょっと強面っていうかチャラそうっていうか……

大人の色気?みたいなものが滲み出ている。




「見た目の通りクールって感じで、本当にかっこよかったよ?世の中にこんなイケメンがいるんだーって、私ビックリしちゃった」


「まっ、身近にこういう人は中々いないし、いたとしたら女子はみんな付き合ってるよ」


「だよねー?」




朝からはしゃいでいるみのりの隣で、この写真を涼介に見られてなくてよかったと、私はホッとしていた。

昨日のみのりとのやり取りを説明しても、涼介の事だからどうせ信じてはくれなかっただろう。

嘘つき呼ばわりされて暴言を吐かれる未来が目に見えている。




「そうそうっ、肝心な事忘れるところだったー!」


「肝心な事?」


「真愛、来月にある検診の申し込み表出してないでしょー?」


「検診…?」


「やっぱり忘れてるーっ。就職希望者は絶対に受けておけって担任がうるさく言ってたやーつ。十倉とくら先生が…あっ、十倉先生っていうのはこのイケメン養護教諭ね?その十倉先生が今日中に持って来いって、昨日言ってたよー?」


「あぁ、それなら受けるつもりなんてないから出さなかっただけ」


「受けなくても出せって先生言ってたよ?」


「はぁ?なんでそんな事…」


「私だって知らないよー。申し込み表がないなら予備の渡すからって…はいこれ。ちゃんと書いてよね?ちなみに締切は今日の放課後までだから。伝言は以上、わかったー?」


「ったく…わかったよ…」




早速イケメンと話す機会が出来てよかったね?なんてみのりは言うけど、私にはただ面倒な事の1部でしかなかった。

確かに顔はいいけど、だからって他の女の子達みたいにキャーキャー騒いで喋りたいってわけでもないからね。

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