第18話

この光景、狂気に思われるかもしれないけどとても心地がよかった。

肩を自身に抱き寄せる男と、自身を預け身を寄せる私。

あれだけの熱量を受け取った後の体はまだ暖かく疼いていた。

何を言うわけでもなく、ただただ私達は身を寄せあっていた。

周りには脱ぎ散らかした服と、それと一緒に無数のナイフが散らばっていた。

いつかこのナイフが自分に向けられるかもしれない…けどそんなのはどうでもいい。

私は彼を愛してしまった……彼も私を愛してくれる。

行為には愛があったし幸せだった。



「…ねぇ」



指を絡めれば彼もそれに答え、そしてまた幸せな時間が始まる。

心も体も十分すぎるぐらい満たされた。



「もっと…シたい」


「oh…honey……女はそういうこと言うもんじゃない。だが積極的なのは嫌いじゃない、好きなタイプだ」



暗闇の中…ベッドの軋む音と私達の乱れた呼吸以外なにも聞こえなかった。

ダメ…抑えられない……



「我慢しなくていい。ほら、力抜け」


「……こう?」


「ah…よしよし、いい子だ。そのほうが楽になれる」



ベッドの軋む音が大きくなるにつれて、私達の呼吸はどんどん激しさを増していった。

締め切ったカーテンからチラり、朝日が射し込んでいたのを2人は知らない……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る