第2話
「幸来っ」
登校中後ろから彼女に声をかけ、駆け足でやって来たのは彼氏である
幸来と要は中学からの知り合いで、彼女の家庭の事情を知る数少ない内の1人でもある。
「おはよう、要」
「おはよ。今朝LINE見たよ。昨夜も遅かったみたいだな?」
「もう慣れちゃったけど」
「たまにはゆっくりしろよ?そうだ、もうすぐ修学旅行だろ?……お袋さんは何て?」
「行けとは言われるけど…まぁ、どうしようかなぁ?って感じ…」
学校生活においてビッグイベントとも言える修学旅行。
みんなそれを楽しみにしており、学校での話題もそれ一色なのだが、幸来は少し複雑な気持ちだった。
参加するとなると高い費用を払わなければならない。
ただでさえ家に余裕はないのに、母親にそんな大金を出してもらうのが申し訳ないと感じていたのだ。
その母親は行きなさいと言うが、やはりどこか心苦しい…
「そっか……わかった。幸来が行かないなら俺も行かない」
「ちょっと何言って…要には関係ないじゃん?ずっと前から楽しみだったんでしょ?なら行きなよ?」
「俺は幸来と行きたい。幸来と行って、2人で楽しい思い出をいっぱい増やしたい」
「要…」
「幸来がいないと意味がないんだ。時間もまだもう少しある。だからもう一度考えてみてくれないか?」
「……わかった」
彼の優しい一面と、こんな家庭環境にも関わらず好きだと言ってくれる要が、幸来にとっては自慢の彼氏だった。
側にいてくれてありがとうと、彼女は感謝さえしているのだ。
「幸来ーっ、要くーんっ!」
「あぁっ、菜々じゃん」
「おはよ、岩本」
「2人ともおはよぉ。もしかしたら幸来と要君かもぉって思って走って来ちゃった」
「そうなんだ。朝からお疲れ」
2人に合流したのは
菜々とは高校に入ってから知り合い、性格も良く気が利く一面があり、そして誰よりも要との関係を応援してくれているため、幸来も菜々のことが大好きだった。
菜々は要とも意気投合し、今では3人で仲良く学校生活を送っている。
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