第6話
それから数日…
子供達は毎日のように蝶を見にやって来るようになり、そしてその蝶も大人しく桐也の言う事を聞いているようで、羽の調子も次第に良くなっていった。
短い時間ではあるが、本来のように飛び回れるまでには回復している。
「先生、蝶々だいぶ元気になってきたね?」
「そうだな。この調子だと後2、3日もすれば元通り飛べるようになるだろう」
「けど桐也、蝶の寿命は2週間なんだろ?飛べるようになったところでこいつはもう…」
「そう思うと、なんだか寂しいよな…」
「まだそうと決まったわけじゃない。現にこいつは生きてる。それに短い命を懸命に生きてるんだ…お前達も見届けてやれ」
子供達もまた桐也と同じ気持ちでいた。
怪我が治るのと同時にその短い命が更に削られているのだ。
喜べるものも素直に喜べない。
「忘れるなよな?俺達の事」
子供達は学校で見つけたという草花をかごの隙間から蝶に与えると、蝶はそれに興味を持ってくれたようで草花に近づいてきた。
「そういえば先生、どうして鳥かごに蝶を入れてるんだ?」
「丁度いいのがこれしかなかったんだ。中は広いし快適、問題ないだろ?」
「まっ、桐也にしてはセンスいいんじゃねぇか?」
「よけいなお世話だっ」
彼らのたわいもないやり取りを見て、楽しいと笑っているかのように蝶はかごの中をクルクルと飛び回った。
それはまるで、自分もその中に交ぜてと言っているようだった…
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